第6話VSロウ

ー浄聖神矢視点ー


俺がロウを召喚すると将は冷や汗を掻き、足を一歩引いた。これは……………ロウの覇気に驚いているのか。分かるぞ、ロウの面影はあるけど威圧感半端じゃないもんな。最初にフェルの特訓会場に行った時は誰か分からなかったし。


俺でさえ数秒間固まってから『分かった、コイツロウだ』となったし。俺がそう考えていると将は新たなる異形生物を呼び出す。ソレは虎将天幕であった。アレは将の虎天歩であるハートが進化したものだろう。進化したのはお前だけじゃないってか?それじゃあ俺とロウのコンビネーションを見せつけてやろうぜ。


俺はそんな事を思ってからロウをハートの方向に向かわせた。ハートは魔法陣を展開して多数の弾幕を撃ち放ってくるのだが、ロウは全部避けれている。それに鍛錬した時にフェルが放ってくる弾幕の方が余程恐ろしかった。アイツ普通に万を超える弾幕を放ってくるし。そして更に恐ろしいのが放った弾幕を全部コントロールしている事だった。


そんな事を考えていながら俺はロウに指示を出す。避けて避けて避けて…………避けまくった後に光線を発動させる。単純だがとても強力な戦法だ。ロウはきちんと俺の指示を実行したのだが、ダメージが薄かった。己の弾幕を展開して防御したのか…!?やばいな、そんなのファイネルとフェルしか使ってるヤツ見た事ないぞ。


決勝戦の時より更に技術が上がってる。俺とロウは冷や汗が流れると同時に笑みが溢れてくる。技術が圧倒的に上で身体能力の差を誤魔化されている。そんな面白い相手なんだ、笑みが溢れない訳が無いだろう……!


「ロウ、分かっているだろうがハートの方が技術が圧倒的に上だ!だからこそ面白いというものだ、楽しいというものだ!折角の上の相手なんだ、その技術の感覚を掴ませてもらおう」


俺がそう言うとロウは俺の瞳を見た後に『ニヤッ』と笑った後に咆哮をかました。アレは1日に一回しか使えない『極限の咆哮』だな。そうか、ロウもハートと将を好敵手と認めたか。それに新たな技を会得するにはその状態が最適か。俺がそう考えていると将は強化されたと感じたのかハートに新たな指示を出した。


ハートはその指示を受けると身体に稲妻を纏い始めた。アレは属性纏い、光と闇、中立から更なる属性を追い求め、獲得した者が長年の鍛錬を得て習得できる天才の技。確かに才能はあると分かっていたがここまでなのかよ!?俺が驚いているとロウが『ガウ!』と吠えた。そうだな、俺とロウは天才で止められるほど甘くはないぜ。それに多分だけど才能で言ったらフェルの方が上なんだよな。


才能の暴力であるヤツが身近に居るんだ、何でそんな事にビビってたんだろうな。俺がそう考えを整えているとハートが向かってきた。そしてロウとハートの額がぶつかり合う。


ーロウ視点ー


全く、神矢には困ったものだな。やっぱり吾輩ら異形生物たちが居ないとダメだな。基本的に神矢は誰にも頼ろうとしない。ファイネルに聞いた所、神矢は家族の愛を知らない。暮らせる十分なお金を毎回送っているだけなのだとか。だから我らを頼っている風に見えて頼っていない。


最後の頼りの吾輩らに迷惑に思われ、離れられたら今度こそ心が壊れてしまうから。防衛本能みたいな物なのだろう。それもフェールニストが来てからだいぶ良くなってきたのだがな。一番後に来たフェールニストに神矢の心を救われたというのは複雑なものがあるがな。


それでもまだ頼り切れていない一面もあるみたいだかな。それこそ今の場面なのだろう。話が逸れてきたな、ハートの奴を相手にするとするか。ハートは吾輩との身体能力を比べると圧倒的に差がある、しかし、それを埋めるだけの技術が存在している。フェールニストやファイネルから聞いた努力と才能の天才というものなのだろう。


しかしこの程度の実力なら容易に潰せるものだ。相手が吾輩と同格?それは身体能力=技術となっているだけだ。フェールニストや封印が解けた事で更に力が増幅し、吾輩らよりも一段階上にいるファイネルのような格上と常に戦っている吾輩が同格に負ける?そんな訳なかろうが。同格のやつを潰せる選択肢など多数用意しておるわ。


吾輩がそう考えながら額をぶつけているハートに魔力の流れで尻尾を鋭化させた攻撃を喰らわせようとするが獣の勘なのか咄嗟に避けた。そして地面にはコルの爪によって抉られた跡と吾輩の尻尾によって抉れた跡があった。避けられたか、やはり獣の勘は馬鹿に出来ないな。吾輩もフェールニストとファイネルの相手をすると獣の勘が頼りになるしな。


ハートのヤツは魔力によって爪を更に鋭化し、貫通力を強くした爪を吾輩に向かって刺してくる。それを吾輩は尻尾を使って絡めとる。そして無防備になっている顔に向かって思いっきり硬化した吾輩の額を叩き込む。少し硬かった、咄嗟の判断で己の額に硬化でもしたのだろうな。ハートは立ち上がったと思ったらフラフラしていて思うように立てていなかった。あんな大きいのを喰らったのだ、余裕で立ってもらっちゃあこっちが困る。


吾輩がそう考えていると神矢がトドメを指示してくる。吾輩は全身の魔力を前脚に集める。そしてその魔力を変化させる。魔力の質を剛から柔の魔力へと。相手を倒すための魔力ではない、相手を気絶させるための優しい魔力に。そうして吾輩はフラフラのハートの頭に前脚を置いてから魔力を流し込む。そうするとハートはバッタリと倒れた。

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