第8話 ダマリャーノ、スズメバチを獲る

 我、ダマリャーノ。

 うむ、実に昼寝がはかどる。


 しかしながら、幸せとは実に儚きもの。

 平和に惰眠を貪っていたところに、猫代ねこしろが血相を変えて飛び込んできたのだ。


「ふぅ、騒がしくていかんな。もっとこう、たまには心静かに宇宙の深淵でも覗いたらどうだ」


「そんなことより、す、す、スズメバチですっ!!」


 なんたるちあサンタルチア。

 先日、地球に出かけた際にくっついてきたらしい。


「って、貴様ー! ドア開けるからこっちに来たじゃまいか。ええい、一人で死ね! というか設定万能ロボだろ、自力でなんとかしろ!」


「そういうあんたは自称猫じゃないですか。今こそ見せてもらおうか! 野生の力とやら」


「キャラ変わってんぞ! 猫しろおおォォ」


 ……

 

 よっこいしょ。

 

 都合よく転がっていた虫網で、スズメバチには無事に退場いただいた。我、やれば出来る猫。


 落ち着いたところで、昔読んだ漫画『魔少年ビーティー』で、オオスズメバチの捕まえ方を解説していたなあと思い出した。『魔少年ビーティー』は、ジョジョで有名な荒木飛呂彦の初期作品だ。長年、ビューティーと空目していたことは秘密である。


 スズメバチの捕獲。

 そんな危険なことを少年ジャンプに載せて、真似する子どもがいたらどうするんだという顔をしているな猫代。

 

 その心配はない。

 

「なぜなら準備の第一段階、でかいカエルを捕まえる」


「田舎在住以外オワタ」


 うん、コンビニが徒歩十分で遠いとか抜かす都会人は脱落確定だ。シン・イナカは単位がデフォで車なのだよ。

 

 泣いてなんかいないから! 

 宇宙に田舎も都会もないから!


「第二段階、カエルの皮を剥く」


「なるほど難易度が鬼畜すぎて、真似はまず不可能ですね」


 ちなみにジョジョは途中で脱落したけれど、あれ何部まで行ったんだろうか。当時の荒木先生の絵を見た後で現在の絵を見ると画力の進化にびびる。継続とは偉大だと思う。

 

 我のお絵描き? うん、背骨のラインにずっと苦戦している。


 連載当初から今まで違和感がない『ガラスの仮面』もあれはあれですごい。

借りて読んだだけだから、あまり記憶に自信はないけれど。


 そういえば、ガラスの仮面の主人公には役作りのためにど田舎のバスで終点まで行って、ほぼ手ぶらで山に籠って数日過ごし、最後ヒッチハイクで帰ってくるというダイナミックにすぎるエピソードがあった。


「フィクションはフィクションであるから許されることも多いですねぇ」


「……猫代。今度は肩にカメムシがついておるぞ」


 虫が嫌で宇宙に引っ越したというのに、こ奴ら逞しすぎるだろう。


「この馬鹿AI! 虫が来るから、柔軟剤は無香料にしろと言っただろうーー!」


「私は柑橘系のが好きなんです。文句があるなら自分で買いに行くがよろしい!」


 紅天女の物語と同じく、虫との戦いもまた終わらぬのだ。あ、にゃー。 

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