第51話 弟と妹と 顔合わせ ④

「は〜、何とか納まったな。」


………………………………なにが?と小一時間ほど問い詰めたかったけど、私もホッとしたのは確かだから許してあげましょうか。


「そうだね。」


顔合わせが無事終わって、私達も泊まっていけという両親からのお誘いを何とか振り切って、レストランから抜け出した私と真樹。

何が悲しくて、それぞれの両親兄姉が泊まるホテルに同宿しないといけないのよ!

明らかに、ヤルのが目的だわよね。

そりゃ、私と真樹も、お泊りするならヤル事はヤルけどさっ。


「真樹、アリガトね。」


「ん、何が?」


問いながら、差し出された手を握ってみる。


「ん、プロポーズ。」


「あれ、まだ、終わってないぞ?」


「……………………………………え?」


「あれは両親の許可を頂いただけで、これからがプロポーズ本番だぞ?」


「……………………………………は?」


握られた手を、強く引かれて、表通りを歩き、とある路面店の豪華なガラスドアを開けて入っていくのを引きずられるように付いていって。


「え、は、ぁ……………………………」


訳がわからずに戸惑っていると、


「ほらっ、この中から選んでくれ。」


ガラスケースの上に置かれた、緋色の布敷トレーに並べられた、宝石付きの指輪達。


「予算の関係で、ここに有る物以外は駄目だからな。」


「え、は、ぁ……………………………」


「急がせる訳じゃないけど、早くしないとサイズ直しの時間が足りなくなって付けて帰れなくなるぞ。」


「………………………………………これ。」


手にとって、選んだのは、透明なイエローがかった比較的大きな石が付いた、指輪。

真樹の瞳の色って、少しだけ薄い色で黄色がかってるのよね。

この中から選ぶなら、これ一択よね。


「………………………………………ねえ、真樹、もしかして、下見してくれてた?」


「さあね?サイズ合わせお願いします。」


店員さんに声掛けして、改めて彼の手を握り締めて、


「………………………………………アリガトね。」


「礼はまだ早いぞ。受け取ったらすぐに空港へ向かうからな。最終前の便が空いてたら変更して早く帰るぞ。」



※※※※※※※※※※



7時台の便に空席が有り、最終便から変更して腹ごしらえに入った滑走路正面のテラス席があるカフェレストラン。


注文を終えて、改めて歩海に向かい合って、


「………………………………結婚して下さい!」


指輪ケースを開け、正面に掲げて、改めてプロポーズの言葉を。


「はい、喜んでお受けします。」


「……………………………………………」

「……………………………………………」


お互い、顔を見合わせて、


「は〜、緊張したぁ。」


「え〜、今更ぁ〜?」


離陸する機体の轟音が僕らの掛け合いのような言葉をかき消して。


「あはっ?」

「フフッ?」


「…………………………………………」

「…………………………………………」


轟音がおさまる前に届いたディナープーレートに手を付けながら、無言で食べ進める僕達。


「ねえ?」


「ん?」


「帰ったらさ。」


「帰ったら?」


「今夜は寝かせないからね?」


指輪をはめた掌を返しながら見せて、とんでもない事を言い始める。


「………………………………あ〜、お手柔らかにお願い出来れば。」


コイツがこう言うからには、寝かせてもらえないだけじゃないからな。

明日の講義、無事に受けられるだろうか。

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