第50話 弟と妹と 顔合わせ ③

「………………今日これから彼女にプロポーズする予定です。彼女が受けてくれたら、結婚を認めていただけますか?」


ちょっ、まっ、えっ?

綾辺真樹が、予告もなく、突然に、衝撃の告白を。

あれ?私、今日にでも逆プロポーズするつもりで用意して心構えしてたのは何だったんだろうか?


「…………………………………………あの〜、実は〜、私〜、今日彼と〜午後からデートの約束をしておりまして〜、その際に『逆プロポーズ』する予定だったのですが〜、先を越されてしまったようですね〜?」


生温かい視線を、双方の家族から感じる私達二人。


「あ〜、まあ、二人とも成人してるんだし、親の許可云々の前に話をしてくれたんだし、反対する理由は無いわよね。」


真樹のお母様からいただいた、有り難いお言葉。

涙が出そうになる。

私の父はと言えば、お母様のお言葉にウンウンと頷いているだけで。

なし崩しで話が進んで行く。

ホントにいいんだろうか。


「それよりも、お二人とも学費も生活費も自分で賄ってるとか。貧乏生活するよりも今からでも私達親を頼って欲しいわね。」


いえ、決して生活が苦しかった訳ではない。

割の良いバイトも出来る学部だったし。

それなりに忙しかったけど。

なによりも、普段から苦しくて忙しいからこそ真樹と楽しく過ごせたんだし。


「いや〜、めでたい!同時に三組も結婚が決まるなんて。」


いえ、父様、私達はまだ結婚出来ませんのよ?卒業まであと一年近くと卒業後は研修が二年あるしね。


「あ〜母さんにお前の花嫁姿を見せたかったぞ。」


だから、お父様、まだですってば!

あ、写真だけなら有りかも。


「私もお父さんに花嫁さんを見せたかったわね。」


お母様、泣かせないで下さい!

涙が止まらなくなるじゃないですか。

おい真樹!空気になってないで、何とか言いなさいよ!

プロポーズ、あれで終わりじゃないでしょうね?


グダグダになりながら進む、両家の顔合わせ。


「あなた達も、今夜の宿をここに取るかな?」


あれ、まさか、両親と兄達も、今夜はお泊まりですか?

私達は学校があるので取ってもらったチケットで帰らないといけないんですけど。


ねえ、真樹!なんとか言いなさいよっ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る