第37話 ご褒美、決めましょうか?
再びの、水族館。
結局、『ユーちゃん』の泣き顔は見せてもらえなかった。
『ユーちゃん』の後ろ姿を見ながら水族館に入場し、お化粧直ししても涙の跡を隠しきれない彼女の笑顔を見つめてから、手を取り合って『約束の地』へ。
この笑顔は、『ユーちゃん』なのか『由紀』さんなのか、どっちなんだろうか?
ゆらゆらと漂うクラゲ達を眺めながら水槽前に佇んだ後、手を繋いでゆっくりと歩き出した僕達。
「………………………………なんか、僕達、遠回りしましたね?」
ペンギンの前まで近道して。
「………………………………いえ、近道ですよね?」
今度は、チンアナゴの前まで遠回りして。
「どっちなんでしょうね?」
順路通りに歩き始めて。
「両方かな?」
ネット上で当たり前のようにしていた、『言葉遊び』の様な遣り取りを『リアルに体感』出来て嬉しくて、楽しくて、聞いてみた。
「………………………………どうして、そう思ったのかな?」
問い掛けに、不思議そうな顔で僕を見上げる『ユーちゃん』。
少しだけ、戸惑ったような表情で、
「だって二組の別々のカップルが、今日突然一組だったと気が付いたんですから。」
「………………………………カップル、なんですね。なんか、不思議な組み合わせですね?」
「そうですよ?チャットルームで『トーさん』がいつログインしても反応出来るように待ち構える位には大好きでしたから。」
「僕も、『ユーちゃん』が即時反応してくれて、楽しかったですよ。」
「『楽しかった』、だけですか?」
「『嬉しかった』です。」
「………………………それだけ、ですか?」
「『楽しくて』、『嬉しくて』、『大好き』でした。」
「私も、『楽しくて』、『嬉しくて』、『大好き』です。」
暫し見つめ合った後、『由紀』さんが、少し口籠った後に、囁いた。
「ご褒美、決めましょうか?」
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