第24話 約束の地 ③
「来ましたね?」
「ええ、来ましたね。」
『約束の地』
新電波塔タウンにある、水族館。
クラゲの水槽の、前。
サッと座り込んだ由紀さんは、僕を見上げながら、呟いた。
「偶然って、あるんですね?」
僕が周りを見回しながら思わず口にすると、
「必然かもしれませんよ?」
「運命とも、言いますね。」
「赤い糸の、伝説かも?」
「「…………My better half ?」」
言葉遊びのような会話の途中から、言葉が重なり、何故か、涙が出てきて、止めることが、出来なかった。
由紀さんに、伝えなければならないことを、口にしようとすればするほど、涙が止まらない。
ふと、座り込んだ由紀さんを見下ろすと、彼女も目に涙を溜めたまま、無理に笑顔を作ったような表情で、僕を見上げていた。
「聡一郎さん、私、今、伝えたい事が、あります。」
これだけは、僕が先に伝えなければいけない。
泣いてなんか、悲しんでなんかいられない。
「僕も、伝えたい事が、あります。先に話してよろしいですか?」
「……………………場所を変えましょうか、長くなりそうですし。」
水槽前に休憩用の椅子があるスペースに移動して、対面で腰掛けた。
「……………………由紀さん、僕は、明日、会う約束をしている人がいます。
『ネッ友』で、今日お見合いすると伝えていて、今日の結果に関わらず一度会って話をしたいと思った人です。」
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「……………………由紀さん、僕は、明日、会う約束をしている人がいます。
『ネッ友』で、今日お見合いすると伝えていて、今日の結果に関わらず一度会って話をしたいと思った人です。」
真剣な表情で、涙を拭いながら、聡一郎さんは話し始めた。
「お見合いをしておいて不誠実だと思われるかもしれませんが、貴女に黙って『彼女』と会うことが出来ませんでした。」
「……………………実は、私も、明日会う約束をしている人がいます。
お見合いのお返事は、明日その方に会ってからするつもりでした。
この事を、伝えなければいけないと、思えば思うほど、涙が止まらなくなってしまって。」
「……………………由紀さん、もう一度、僕と『約束』しませんか?」
「『約束』?ですか?」
「はい、約束です。『縁があったら、また、ここで、お会いしましょう。』」
「……………………『縁があったら』ではなく、『必ず』でお願いします。」
「必ず、また、ここで、お会いしましょう!約束します。」
「必ず、ですよ。」
今日は、今は、今の私は、勇気を持って、会いたいと、言えた。
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