第23話 弟と妹と 北の大地にて ②
「綾辺っ、そこっ、危ないだろうがっ!」
「わかってるよっ、一々ウゼえぞっ!」
ついつい、口が悪くなってしまう。
だって、ホントに、どついてでも注意しないと間違いなく大怪我してたんだからね。
泣くぞ!あんたが怪我なんかしたら。
故郷を遠く離れた、北の大地。
もう5年も経ったかと思うと感慨深いが、隣りに居る実験パートナーの綾辺真樹が本気で心配。
優秀なのは周りから認められているんだけど、何処か抜けたところがあって、私が付いていないとと思わせてしまう。
「あ〜っ、もうっ、何で上手く行かないのよっ?」
「歩海ちゃんよ〜っ、マニュアルとその手順が違ってないか〜?」
「……………………あっ、ホントだ〜、って私を名前で呼ぶな〜っ!」
名前で呼ばれて、つい怒鳴ってしまう。
綾辺に『歩海』って呼ばれると、私、性的欲求が我慢できなくなりそうなのよね。
実験室内で二人っきりだしね!
条件反射よね。
だから普段は、『砥部さん』と呼ばせているのよっ。
入学直後に一瞬だけお付き合いしていた事もあって、彼の脳内では私は『歩海』なんだろうね。
お互い、初カレ初カノで、初体験で、私としては最高の彼氏だと思っていたんだけと、お付き合いほんの一月余りで振ってしまった。
理由は、『身体の相性が、良すぎるから』。
初めて同士で良いも悪いも無いとは思うんだけど、当時は健康な10代男女として制御が効かなかったんだよね。
今となっては、振ったことは後悔しかないんだけどね。
でも、あのままお付き合いし続けてたら、毎日盛っていたら、二人とも留年へとまっしぐらだったろうからね!
そんなこんなで、今や腐れ縁になりつつあるんだけど、クリスマスイブだけは私からデートに誘って、食事の後、予約したホテルへと連れ込むのよね。
初めての、一年生の時のクリスマスイブに、誘った理由を聞かれたんだけど、
『だって、寂しいじゃないのよっ!』
と答えておいたのよね。
ホントの気持ちなんか、言えるわけないじゃない!
綾辺を狙ってる子は、今でもたくさんいるんだからねっ!
私が綾辺を好きなのは、最初からずぅ〜っと変わらないんだからねっ!
『寂しい』から、七夕に、年に一度の逢瀬として誘ったりもしたけどね。
素直についてきてくれたから、嬉しかったね。
卒業まで、あと一年余り。
そろそろ学業にも余裕が出て来たから、今年のクリスマスイブには綾辺に私から再告白しようと思ってるんだけど、受けてもらえるどうか、思いっきり不安しか無いのよね?
逆プロポーズって、どうやればいいんだろうか?
兄さんは、確か逆プロポーズされたのよね?
今度、聞いてみよう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます