第18話 お見合い ⑤

「あっ、美味しいっ!」


先日のディナーよりは薄味で、ボリュームも皿数も劣るけど、プレートに少量を数品ずつ盛られて次々と運ばれる料理はどれも上品なお味で、人気があるのも納得できます。


隣のテーブルでは、僕達よりも遥かにハイペースで食と飲が進む『カップル』が。

空き瓶の数が、異常です。

見ないように意識しても、どうしても目に入ってしまいます。


「ええ、美味しいです。」


由紀さんも、隣を意識しながら、


「お隣、飲みすぎかもしれませんね?」


「お互い、いい大人ですから、ほっときましょう。」


「ウフフっ、そうですね、ほっときましょうか?でも、酒瓶が転がってるのを無視すれば、どう見ても高校生の初デートみたいに見えますけどね。」


ハイペースでグラスを空け、言葉少なに黙々と食を進める父母。もう、二人きりの世界を作って閉じこもってますね。


魚料理を食べ終え、追加でグラスで注文した白ワインを飲み干した由紀さんに、


「由紀さん、色々とお尋ねしたい事があったのですが、全部どうでも良くなってしまいました。」


「私もです。でも、何とな〜くですけど、聡一郎さんの事、良くわかったような気がします。」


「私も、そう感じました。由紀さんの事を、知りたい事を、わかってしまったとでも言うのかな〜と。」


「念の為にお尋ねしますが、お会いするのは初めて、ですよね?」


「そうだと、思います。地元がお互い近いですから、何処かですれ違ってるかもですけどね。」


「私、この下の水族館によく来るんですよ?」


「僕もです。年パス、今も持ってます。」


懐から、パスを取り出すと、


「あっ、私もです!」


お互いに、見せ合って、写真を見て、


「「え〜、変な顔〜っ?」」


身分証明写真にありがちな、変顔写真に盛り上がる。


そこで、その、変顔写真を見て、突然気がついて、しまった。


「……………………あの〜、由紀さん?もしかして、去年の秋に、クラゲの水槽の前に、泣きながら、1日中座ってたり、してませんでしたか?」



※※※※※※※※※※



「……………………あの〜、由紀さん?もしかして、去年の秋に、クラゲの水槽の前に、泣きながら、1日中座ってたり、してませんでしたか?」


………………………………年パスの変顔写真に盛り上がった私達。


聡一郎さんの、その変顔写真を見て、ふと、思い出して、しまった。

もしかして……………………………………


聡一郎さんが、同じように、思い出した様に、つぶやいた。


「……………………あの〜、聡一郎さんも、もしかして、チンアナゴの水槽の前で、変なステップで、変な舞を、踊ってませんでしたか?」


「………………………………………………」


「………………………………………………」


「「と、いうことは、もしかして?」」


二人で、気がついて、しまった。


「聡一郎さん、約束、覚えてますか?」


「はい、はっきりと、覚えてます。」


「「……………………縁があったら、また、ここで、お会いしましょう!」」

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