第5話「プロセス」

愛よりも深く誓い合った

 ティタニア・フレスコール著 愛の眼より引用


「先生、また学識を深めているのですか?」

「もう教授とは呼ばないのだな」

「ああ、そうでした、つい日を増して関係を誤認してました」

「また大層な回答だね、別にいいがね」

「それはつまり?」

「先生、と呼んでいいさ」


「ありがとうございます、なんだか嬉しいです」

「呼び方一つでそこまで舞い上がるものかね」

「ええ、愛称と思っているので」

「まさかあだ名のたぐいだと?」

「アハハ、」


「言葉がつっかえてるぞ」

「ええ、愛称でもあり敬愛でもあります」

「言い回しがうまいね」

「いえいえ、それほどでも」

「いや、わかってないだろ」

「褒めたのでは?」

「幸せ者だな」

「えへ」


「なーエドモンド」

「はい」

「君は愛を知っているか」

「ふぇ!?」

「そう、身構えるな」

「いえ、ド直球過ぎまして、驚いたのです」

「以前、君も言ってたろ、愛は続くかと」

「はい」


「つまりはその愛について調べていたんだ」

「愛を調べる、また、先生らしいですね」

「どう思う、もうあれから三日以上、愛と名の付く本を読んだが、さっぱりでな」

「愛とは一人では出会えないものです」

「では、君がいれば分かるのか」

「え!」

「なんだ顔を隠して、」

「いや、先生って、あまりにも、あまりにも」

「なんだ、おかしいとこがあったか?」

「いえ、ちょっと暑くて」

「そうか、窓でも開けるか」

「あ、大丈夫です」

「なんだ、暑いんだろ」

「いえ、本当は照れたんです」

「照れた?なぜだ」


「だって愛を私で確かめたいんですよね」

「そうだが」

「それって、告白じゃないですか」

「そうなのか?」

「え?違うんですか」

「知らないから教えてほしいって意味だ」


「先生・・・」

「なんだ」

「最低です」

「え?」

「純粋無慈悲!!!」

「なんだそれ」

「女性の前で絶対に愛って言っちゃダメですからね」

「なぜだ」

「だってそりゃ、もうバカ!」

「君がそんな悪態をつくとはな」

「あ、つい、カッとなって、改めまして先生、聞いてください」

「ああ」

「愛というのは男女を繋ぐものなんです」

「そうだったのか」

「はい、だからむやみに言うのは愚か、調べるものでもないんです」

「では、知らないままいろと」

「そうではありません」

「ではなんだ」


「寄り添うんです」

「寄り添う?」

「はい、お互いを思い、接して、歩く、そうして心掛けて、やがて愛が実るのです」

「愛にもプロセスがあるのだな」

「ええ、だから初めから愛々言ってると嫌われますよ」

「嫌いになったのか?」

「いえ、先生の場合はセーフです」

「そうか」

「ですが、これからは違いますよ」

「それはつまり」

「そうです、先生は私と愛のプロセスに入るのですから」

「そうか、では寄り添うよ」

「ええ、いい男っぷり見せてくださいね」

「ああ、頑張ってみるよ」

「フフ」

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