第4話「恋の物理」

「また本を読んでいるのですか」

「話し相手がいないからね」

「では本と話しているのですか?」

「違うよ、言うとすれば、時間をやり過ごしているだけだ」


「なぜ私と話そうとしないのですか」

「傷つけたくないからだ」


「それは考えものですね」

「本を読めば、学識もつく、それまで待っていてくれ」

「教授、恋に正解はありませんよ」


「だとすれば、恋とはなんだ」

「好きという気持ちはオンリーワンなんです」

「つまりは?」


「言い得てしまえば、そう、ありのままでいいんです」

「女性は飾りものを好むだろ」

「化粧やネックレスは、見せる為ではないんです」


「ではなんだね」

「そうですね、風潮ですかね」


「そうか」

「はい、飾りを身に着けるだけで、輝けるわけではないですから」

「ずいぶんと哲学的だね」


「シュレーディンガーの猫はご存知ですか?」

「ああ、知っているよ」

「あれと似ているんです」


「と、言うと?」

「可能性という事です」

「私が君を好きになる可能性のことか」

「いいえ、違います」


「ではなんだね」

「愛が続く可能性です」


「そうか、悪かった」

「いいえ、大丈夫ですよ」

「私の愛はどうだね」

「とても純粋ですね」


「それはいい事か?」

「ええ、とても」


「なぜ君は、私を思ってくれる」

「それは難しい問ですね」


「一目惚れか?」

「いいえ、違います」

「では、同情か」

「いいえ、」

「ではなんだ」


「わかりません、ただ心が反応するんです」

「それが恋なのか?」

「ええ、きっとそうです」


「もし君の心が反応しなくなったら、それで終わりか?」

「そうですね」

「では心とはどう掴めばいい」

「やはり教授は素敵ですね」


「答えになってないぞ」

「大丈夫です、そのままで」

「君はこんな私が好きなのか」

「ええ、全て」

「それは、私が手に収まるからか」


「いいえ、教授が私を育てるからです」

「育てる?」

「ええ、そうです」

「君は、私といる事で、向上すると」

「はい、実りがあるんです」


「そうか」

「はい」

「さて、歩くぞ」

「教授照れてますね」

「何を言う、これは日差しのせいでな」

「まだ家ですよ」

「うっ・・・」

「行きますか」

「ああ、よろしくなエドモンド」

「ええ教授」

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