第3話「マキナス」

「教授って実は不器用ですよね」

「なんだね急に」

「いえ。だって恋の作法がおざなりですから」

「そうか、実を言えば、まだ一度も人を愛した事がないんだ」

「それはそれは、やはり研究一筋だったんですね」

「だが。私が研究をする理由は、自身のためではないんだ、昔色々あってな」

「いいですよ、無理に語らなくても、ただ先生が幸せなら、それが私の幸せです」

「君は優しいねエドモンド」


「私は根深く生きることを信条にしていますから」

「しかしそれを言っては、少し鼻にかけてるように思うが」

「はい。私事ですが、伝える事で、より責任を感じるんです」

「そうか、確か、マキナスベータの言葉にあったな」

「知ってます、」

「そこは言わないのか?」

「マキナスベータ、彼は偉人ですが、私には理解出来ませんでした」

「そうか、第2章は読んだか?」


「勿論です、人は心の内にしまっているものは確かな自分の真実で、それを言えた時、初めて自分の真実に責任を負う」

「そうそう、君の信条と似ていないか?」

「いえ。マキナスベータ彼の作品は、宗教的なオマージュなんです、だから言ってしまえば、虚言なんです」

「確かに彼は、最終的に本を使って戦争を起こそうとしていたな」

「はい、彼がその時言ってました、個人間の対立では世界は変えられない、社会を変えるには戦争しかない」

「やはり常人のそれを超えてるな」


「そうですね、考えも付かない事を言いますね」

「それだけ軋轢や鬱憤があったのだろうな」

「ベネットグレイシャス、彼の妹はイジメで自殺してますからね」

「そうだったのか、つまりは報復活動の一環だったのか」

「いえ、ベネットの遺書に書いてあったんです、私にとって死は喜びですと」

「つまりは、社会を恨んではなかったのか」

「はい、多分そうでしょう」


「ではマキナスの本道は、妹の考えを説いて欲しかった」

「そうです、だから最終的に宗教的なオマージュになったんです」

「エドモンド、君は私以上に、マキナスを知っているんだな」


「なんせ学生時代はお金がありませんでしたから、代わりに入信して、本を読んでいたんです」

「まさかマキナスベータが起源と呼ばれる、あの、死の科学に入ったのか?」

「はい、それ以外にも、転々としていました」


「そうか、では、洗礼もしたのか」

「まさか、学生にそれはないでしょう」

「良かったよ」


「先生随分と話しましたが、本分覚えてますか?」

「そういえばデートをするんだったな」

「はい」


「ではマキナスに習って、君に入信しようか」

「また、お戯を」

「洗礼も頼むぞ」

「困りましたねフフ」

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