第2話「恋愛教授」

「エドモンド、なぜ手をポッケにしまってる?」

「え?いやそれは・・・」

「もう恋人なら、手を繋ぐのが主流だろう」

「先生って意外に大胆な事言いますね」

「なんだ、乙女の間合いでもあるのか?」

「いや、さっきの今までは、いちよ仕事上の関係だったんですよ、」


「つまりは耐性が無いんだな」

「いえいえ、ありますよ!先生より私の方が色々詳しいんですから」

「そうなのか?」

「はい、そこを追求する辺りから、やっぱ素人って感じしますもん」

「だが今は君のほうが切羽詰まってるようじゃないか?」


「そりゃ先生みたいに無神経じゃ無いからです」

「いや、なぜ攻める」

「良いですか、恋愛ってのは、意識し合って甘酸っぱいものなんです」

「そうか、意識か」

「はい、もっと乙女の扱い方に慎重になってください」


「では、手を繋ぎませんか、マドモアゼル」

「はひ??」

「そんな緊張するな、エドモンド」

「やっぱ、無理です、別れましょう」

「え?」

「先生完全に、遊んでるだけですよね」

「何を言ってる、伴侶ができて喜ばしい限りだぞ」


「やはり先生には愛より先に礼儀を身につける必要がありますね」

「重々紳士的だがな」

「そのように知って余りあるという自信のほどが品位を下げるのですよ」


「だがエドモンド、君は知ることで失うものが見えていない」

「一体それは?」

「個性だよ」

「何を言うと思えば、個性など元々なくて良いものです」

「なぜだね?」

「個性というのは象徴であり、誰もが持っていれば争いに転じるからです」

「つまりは私と君の個性は同じ象徴になっていないのか」

「そうですね、だからもう別れましょう」

「え?」


「先生の言った事そのものです、知って失った、先生の軽はずみな愛の表現を見て、絶望したんです」

「では、君はこれから、どうする気だ?」

「そんなの決まってます、先生をいっぱしの男にします」

「え?」

「私好みの男に仕立てます、そして改めてプロポーズします」

「君って、なぜそこまで形や器にこだわる」

「良いですか、結婚とは一生を過ごす覚悟を持つ事です、生半可な人生になっては私を産んでくれた親に顔向けできませんから」


「君は随分、崇高で気高いんだな」

「当たり前です、それは持って当然のものです、私はいつ死んでも後悔しない生き方をしてるんです」

「そうか、では私をいっぱしの男にしてくれ」

「はい、まずはデートをしましょう」

「今してたじゃないか」

「いえ、先生とのアレはデートでは無いです、単なるご機嫌とりでしかありませんでした」

「しかし恋愛に取って、人を尊重するのは良い事だろ」

「ですが先生は、手をつなぐという、デートで一番チグハグする所を、笑い半分にしようとしてましたよね、それもう全乙女の敵です」


「なんだ手を繋ぐことは、そこまで過大視する事だったんだな」

「当たり前です、肌と肌が触れ合うというのは、レディーにとって一番センチメンタルな所なんです」

「そうか、では、もっと慎重に時間をかけるべきなんだな」

「はい、まずは相手を思いやって、徐々に距離を詰めて、最後の最後まで機会を伺って、ハッとするものなんです」

「ややこしいんだな」

「良いですか、ちょっと説教じみてしまいましたが、ひとまず実践しましょう」

「わかった、」


「では一緒に歩きますよ」

「おう」

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