裏手段実行
やはり中途半端では気分が悪い。最後まで聞いてみたいと思うのが世の常、人の常だと思わないか、という幻聴が聞こえた気がした。どうやら疲れているらしい。
発売されたのは尻切れトンボで終了。普通ならもう手段はないだろう。
しかしながら、ラリーズに関しては可能性が残されている。恐らくであるが、裸のラリーズは日本のアーチストの中では最も海賊盤が作製されたのではないかと思われている。正確な種類はわからないが、200種類を超えるとの話もある。
裸のラリーズは日本では余程のマニアしか名前を知られていないが、欧米、特にアメリカではその手のマニアの中で過大とも言える高い評価がされているのだ。英語圏でのウィキペディアの日本のアーチストの項目で記事が一番充実しているのが裸のラリーズとの話もあるくらいだ。 関係者から流れたのか、それともマニア間で出回っているのか、色々な音源が裏で取引されているらしいとの話もある。
(実際、水谷氏はライブの殆どを録音していて、デモテープも複数制作している。 それを関係者が横流ししたものが流通されたとされるが、定かではない)
多分90年代のものは、比較的容易に見つかるのではと思う。
しかしながら詳しい情報はないので、入手出来たとしても時間はかかりそうだ。
今回は却下だ。
仕方がない。より可能性のある手段を実行してみるか。
(ずいぶん連絡を取っていないけど、Tさんに頼るしかないか……)
確かスマホに電話番号とか残っているはずだ。 善は急げ。早速、Tさんに 連絡を取ってみた。
嘗て自分は裸のラリーズのファンサイトにて掲示板のやり取りをしていた。
そんな中、掲示板にて、とあるグループのライブ告知があった。場所を見たら思いっきり地元だったので、ライブに行きたいと書き込んだら、大層喜ばれた。ライブハウスで話をしようとも誘われた。このグループは、裸のラリーズの影響を受けているとともにヴェルベットアンダーグラウンド(注1)が大好きだとギターのAさんが話してくれた。 ライブの持ち時間は短かったが、素晴らしい演奏を聴けて満足だった。すっかりファンとなり、出来る限りライブを見に行くようになっていった。
そんな中、ライブのお手伝いをしているTさんを紹介された。かなりの音楽マニアで、お互いに意気投合し、ラリーズの貴重な音源も出し惜しみせずいくつか聴かせてくれた。
何年もの間、ライブに通ったのだが、通っていたライブハウスの閉店、そしてそれに代わるライブハウスがなかなか見つからない等、次第にライブが行われなくなり、いつの間にか活動休止状態になってしまった。それ以来、Tさんとも連絡をしなくなってしまった。
本当に久しぶりの連絡だったが、Tさんは嫌な顔もせず受け入れてくれた。Tさんがいい人で本当に良かった。
近況を話し合った後、バウスシアターの音源があるか聞いてみた。
「DAT(注2)音源なら持っているよ」
との事だった。しかも提供してくれると!もう感謝しかなかった。Tさん、ありがとうございます。
そしてお礼に、昔、CSで放送されたCes Chiens(注3)の映像を提供すると言ったら大層喜ばれた。等価交換の原則から言ったらこちらの方が軽いと思うが。
数日後、早くも音源が届いた。今一度、Tさんに感謝を。そして時間がある時に、もう一度じっくりと聴いてみようじゃないか。
(注1) ルー・リードが率いていたアメリカの前衛的ロックグループ。初期の頃は、前衛芸術家のアンディ・ウォーホルと行動を共にしていた。ウォーホルによるバナナのジャケットが印象的な1stアルバムは、今ではロック史上に残る名盤とされているが、確実に聴く人を選ぶ。
(注2) デジタル・オーディオ・テープレコーダーの略。
一般にはあまり普及していなかったが、プロの人には好まれて使用された。
ちなみに「新世紀エヴァンゲリオン」で碇シンジが部屋で寝ころんで聴いていた
S-DATは、商品化されなかった規格との事。
(注3) 伝説のロックグループのジャックスの早川義夫氏とプログレッシブロックグループの四人囃子の佐久間正英氏によるユニット。ジャックスや早川氏のソロの曲を演奏しているが、キーボードとギターのみとは思えない深い演奏をしていた。
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