第26話

 シートノックはいつもオールファースト七本。ゲッツー五本でまわす。その間外野手はフェンスに当たって跳ね返ったクッションボールの処理や背走の練習をしている。


 ピッチャーはファーストゴロの時のベースカバーの連携とバント処理の練習をした。


 久留美は守備は苦手だ。バッターとの勝負は問題なくてもどうも守備は好きになれない。

 ピッチャーは五人目の野手と言うけれど三振にとればいいことだしランディー・ジョンソンも確かそんなこと言ってた様な気がする。


「ちょっと動き遅すぎそんなんじゃふたつ殺せないでしょ」


 セカンドをグラブで指すりかこに急かされて足がふらつく。久留実に比べるとりかこのフィールディングはキレッキレだ。ボールを捕ってからが早いし正確なコントロールを見せる。


 内野ノックを終えると外野ノックが始まる。ここでノッカーが翔子からキャッチャーの真咲にバトンタッチする。


 真咲は高々と左中間にボールが飛ばした。レフトの雅が捕球してセカンドに送球する。ゴロ、フライを一本ずつ受けると次はサードに送球する、最後にバックホームというわけだ。


 ノックが終わると野手は素振りが始まる。時間がない中で三百振り終わるにはハイスピードで振らなければならない。みんな一度も休まず振りまくる光景を見るとピッチャーでよかったとつくづく思う。


 朝練が終わると部室代わりに使ってる小屋に行き急いで着替えて電車に乗った。三年生は二限からの講義だが一、二年生は一限がある選手がほとんどで特に一年生は必修科目だから遅刻するわけにはいかなかった。


 あと部室は大学にしっかりしたやつがあるから心配しないで欲しい。しかし朝練後の講義がこんなに眠いとは思いもしなかった。


 大学の講義は九十分もあるから退屈でしかたない。携帯をいじる学生やテーブルに突っ伏して寝てる学生(隣に座るあんこ)がいる中で久留実は眠気と必死に戦っていた。しかし眠気というものは我慢すればするほど牙を向けて襲ってくるもので何度か意識がとんだ。ノートをとるとか、話を聞くとかそんな余裕はなくただ眠気と戦っただけで講義を終えてしまった。


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