第18話
ガツ。
力なく上がったフライを捕ろうとファースト、セカンド、サード、ショートがマウンドに集まる。
「私がとりまーす!」
真咲がそう宣言してマウンド近くの落下点にミットを構えた。
アウト、ゲームセット。
真咲はしっかりとボールを掴んだ。
ゲームセット。久留美は大きなため息のあとマウンドにへたり込む。
「やっと終わったぁ」
七回で終わるはずの試合が二時間もかかったのは久留美がデットボールとフォアボール合わせて一一個もだしたせいだった。
「ナイスゲーム。ナイスピッチング!」
差し出されたあんこの手を掴み「ご、ごめんね」謝る。
「何言ってんの久留美ちゃん! 失点ゼロ。奪三振十七個もとったんだから結果オーライだよ!」
微笑むあんこに失笑するしかない久留美は促されるままに整列を終えてからダッグアウトで上級生から手痛い祝福を受けた。
「長いよ、久留美ちゃん。ぼくなんかセンターで一回寝落ちしたんだからにゃー」
「アコは、サンルイデネテタヨ!」
「……」
「ム、ムシデスカ。キ、キビシイィ」
「ソフィーあんたネタのチョイスがいちいち古いのよ」
幸先の良い勝ち星スタートに上級生は湧いていた。
「ねぇあんこ。大学野球ってかく学校の総当たり戦だよね。何回勝てば優勝できるの?」
「あぁそれはね、リーグによって違うけど新東京大学リーグは八つのチームが一回ずつ対戦するんだぁ。だから確実に優勝するにはあと六回は勝たなきゃいけない」
「えっ六回も……」
想像以上に勝たないといけなくて久留美は驚いた。
「はーい、みんな浮かれるのはここまででーす」
真咲の号令がかかる。上級生たちは一瞬で顔が引き締まった。
「明日の駿台学園大学の先発バッテリーはりかこちゃんと翔子ちゃんでいきますよぉ。気を抜かずに明日も勝ちましょう」
まだ一勝しただけ。喜んでばかりもいられない、優勝するには明日も勝たなければならないのだ。
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