VS駿台学園大学

第19話

 第二回戦の駿台学園大学の先発は、右のオーバースローだった。


 しかも昨日の試合に先発したエースが二連投してきた。僅差で敗れたことがよほど悔しかったのかまたはエースのプライドか連投の疲れを感じさせない。


 立ち上がりで光栄打線を三人で抑えた。その気迫に敵ながら圧倒される。りかこも手馴れたように野手にポジションの位置を指示して軽快に投げる。ベンチには久留実と希美そして腰の具合が良くなくスタメンを外れた立花香苗(二年)が最前列に陣取る。


「りかこちゃん、打たせていきましょう」


 代わりにファーストを守るのは真咲だ。りかこは毎回ランナーを背負いながらも要所をしっかりと抑えるピッチングを続けていた。


「あれ尚美さんもう終わりですか?」


「うん、たぶん今日も出番なしだな。りかこさん調子いいもん」


 希の問いかけにうちわを仰ぎながら答える。


「だいぶ気合い入ってる感じだし、だらだら準備するくらいならここで応援するわ。そのうち京子も蛍も戻ってくるよ」


 尚美の言葉通り、久留実はこの試合でりかこの凄さを改めて感じた。

まずテンポがいいこと。バッターの打ち気を誘うボールを早いカウントで打たせゴロを量産する。


 万が一ヒットになっても芯をはずしたあたりだから単打になり後続のバッターに連打を許さない。ゴロを打たせるから当然併殺が多くなり球数も一イニング十球以内に収まる。


リズムがいいから野手は守りやすいし攻撃にも生きてくる。なにより意図を持って打ち取っていた。打者ごとに野手に指示をだしここに打たせると意識させる。意識した野手の集中力を持続させる効果があった。まるで支配者のような立ち振る舞いで試合を作っている。


「さぁいい加減点とってちょうだいソフィー、あんたそろそろ仕事しなさい!」


「Deixe eu《デイシ・エウ》(まかせてください)ソロソロウツヨ」


  六回裏の攻撃。先頭バッターのソヒィーが意気揚々にバッターボックスに立つ。一試合に一本はヒットが打てるポテンシャルを持つソフィーの三打席目は、嫌でも期待がかかる。ピッチャーは特に神経を使うバッターだから何倍ものスタミナを消費するはずだ。


 リズミカルに足でタイミングをとり初球の入りを読んでいる。定石どおりのアウトローの変化球を力みのないスムーズな動作で呼び込んだ。足が地面についた瞬間バットが見えないほどのスイングであっという間に打球は一、二塁間を抜けた。 


 

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