第16話 バージンロード

☆山田愛サイド☆


ワトソンを追いかける。

その事は本当に素晴らしくそして大変だと思い知った。

何故なら彼の事は本当に愛しいのだが彼は様々な事に巻き込まれている。

私はワトソンを本当に心配している。

本当に本当に心が痛い。


するとその中で美奈保さんがこう言った。

私は彼を追いかけるのを辞める、とであるが。

どんな事をあの固まっている時に考えたのだろう。

私は美奈保さんのその顔を見た。

美奈保さんは靴をゆっくり履きながら私達に手を振る。


「.....じゃあ帰ります」

「気を付けてな。美奈保」

「.....」


私は気持ちに嘘は吐けない。

そう考えながら私は実直な思いで真っ直ぐ美奈保さんの顔を見る。

「本当にこれで良いのかい」と言いながらだ。

すると美奈保さんは「うん」と笑みを浮かべて私を見てきた。

そしてこう言ってきた。


「後悔する前に全てを幸せにしたいから」

「だが.....」

「私は勇気の幸せを将来で奪う。だったら今から立ち向かわないと」

「.....」


チラッと見てみた。

ワトソンもかなり複雑そうな思いで美奈保さんを見ていた。

そしてワトソンは「お前の想いは受け止める。ありがとうな。美奈保」と告げた。

すると美奈保さんは恥ずかしがりながら「うん」と返事をしながらワトソンを見る。


「私は勇気に心配してもらう程の女じゃないから」

「美奈保.....」

「大丈夫だよ。私には良い人がきっと現れるから」

「.....」

「だからきっと大丈夫だから」


そして美奈保さんはまたも笑みを浮かべた。

それから私達に手を振ってから去って行った。

私はその姿を見てからワトソンを見る。

ワトソンは私を見ながら恥じらう。


「.....ワトソン。私は君をどう思ったら良いのかな」

「素直な気持ちを持ったら良いんじゃないか」

「そうかな」

「そうだ。素直な気持ちを持ってから全てを見据えるんだ」

「ワトソン.....」


私はその目を見ながら恥じらった。

それから「分かった」と返事をしながら手を交差する。

そしてお姉さんを見る。

「固い意志があるんだねぇ」とニコッとしていた。


「まあでも女子ってのはそういうものだからねぇ」

「.....そうなのか?姉ちゃん」

「振られる事も人生だよ」

「人生って.....」

「私だって何回も振られている。だからもう慣れたけど」


お姉さんは苦笑いを浮かべながら伸びをした。

それから、で?愛ちゃんはどうするの?、と聞いてくる。

私はワトソンの顔を見つめる。

そして私は勇気を振り絞り「そ、その。お家デートするか?」と言ってみた。


「い、いや。い、家デートって」

「私はワトソンとなら何処でも楽しいから」

「いやいや。.....分からんでもないけど恥ずかしい。あからさまだ」

「良いじゃないか」


するとお姉さんが「そうと決まれば全力サポートだね」と笑顔になった。

それから八重歯を見せてくる。

私はその顔を見ながらワトソンを見る。

ワトソンも「ったく」という感じになっていた。

だけど悪い気はしない様なそんな感じの表情である。


「なあ。ワトソン」

「何だ?」

「ワトソンはこれからどう海原とかに接するのかい?」

「俺はとにかく海原の暴走を食い止めなくちゃいけない。だからこそ頑張る。世界が元に戻るとか戻らないとかそんなのどうでも良いけど.....」

「ワトソンの手にかかっているかもね。世界の命運」

「それは確かにな」


それから私はモジモジしていた手を差し出した。

そしてワトソンは私のその手のひらを見ながら目を丸くした。

そうしてから鼻に人差し指を擦ってから反対側の手で私の手を握ってくる。

さながら赤いカーペットでも歩くかの様に踏み出す私達。


「.....バージンロードみたいだ」

「結婚してないけどな」

「良いじゃないか。私はそういう気分だぞ」

「いやいや。そういう気分って」

「私はあくまで君が好きだからな」


そして私はゆっくり歩き出しながらワトソンの部屋に向かう。

それからドアを開けた。

先ほどはゆっくり出来なかった。

だからこそ今度はゆっくりしたいものだ。


「ワトソン」

「.....何だ?」

「君の小学校時代とかの卒業写真が見たい」

「卒業写真?」

「.....それから可能であれば将来.....どうなっているか話してほしい」

「将来は知らない方が良いと思うんだが。碌でもないぞ」


困惑するワトソン。

「だが」と私はワトソンに話した。

それから私は体をワトソンの方角に向けた。

そして笑みを浮かべる私。

そうしてから私は覚悟を決めて「頼む」と告げる。


「私は知りたいのだよ。世界の全ての真理を」

「だけど.....良いのか。ホームズ」

「私は構わない。どんな世界であっても変えてみせる」

「そうか。そこまでの覚悟なら話しても良いけど。.....その前にお茶を持って来るから」

「ありがとう。ワトソン。待っている」


そして私は夕焼け空を見ながらワトソンを待つ。

するとワトソンは1分もかからずしてお茶を持ってくる。

すまない。俺はもう結構お茶を飲んでいるからお前だけでも、と話すワトソン。

私は、ありがとう、と告げて受け取った。

それからワトソンは足を曲げて座布団に腰掛けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る