第7話 好きだからこそ
☆山田愛サイド☆
ワトソンを見送った。
そして1人で悶えている。
遂に言ってしまった。
私の想いを伝えてしまった。
ワトソンは困惑するかと思ったのだが。
そんな事はなかった。
以前と違う。
わ、私にもチャンスがあるかと思って告白したけど。
馬鹿なんじゃないの?!場所が!
「ムードのかけらも無い.....」
私の部屋で告白ってムードないよね?
やっぱり撤回したいけど。
でもこの想いは.....止められない。
私は間違いない。
ワトソンが好きだ。
「助手に恋をする.....ホームズか」
そんな事を呟いていると。
インターフォンが鳴り響いた。
私は、?、を浮かべて、新聞屋か?、と思いながらモニターを覗くと。
そこに銀髪の女の子が立っていた。
「?.....えっと.....どちら様かな?」
『こんにちは。山田愛さん」
「え?.....会った事あったかね?私.....貴方に」
『私は知っています。その。ちょっと貴方なら分かってくれるかと思って来ました。勇気先輩の事です』
「.....え.....?」
私は直ぐにドアを開ける。
すると銀髪の青い目の子は、初めまして.....というよりも。お久しぶりです、と話してくる。
私は、貴方の名前は知らないんだが。君は誰かね、と聞いてみる。
その子はこう告げてきた。
長富廻です、と。
「.....長富さん.....その。私は貴方を全然知らないんだが.....」
「それはそうですね。だけどさっきも言った通り私は貴方を知っています。よく知っています。.....貴方の家族構成も全部」
「.....えぇ.....そうなのかね?」
「私は貴方と何回も会っていますから」
不思議子ちゃんとは聞いたけど。
こんなにも不思議子ちゃんだったなんて。ストーカーかな?、と思っていると。
私は頭痛がした。
そして目の前が少しだけ歪む。
「.....???」
長富さんを見てから。
私は何かを思い出しそうになる。
何をって言われたら分からないのだが。
あくまで長富さんと初対面だ。
だけど何かを知っている気がするのだが。
私も.....。
何だこれは。
「大丈夫ですか?」
「あ、そ、そうだな。大丈夫だ。.....君は何か?後輩かね」
「そうですね。後輩です」
「そうかね」
そして私は深呼吸をしてから、長富さん。何の用事だね?、と聞いてみる。
すると長富さんはこう話した。
率直に言います。吉田美奈保を勇気先輩から遠ざけたいんです、と切り出した。
私は、!?、と思いながら長富さんを見てみる。
それから、それはどういう意味.....、と聞くと。
長富さんはこう切り出した。
「彼女達の将来を知っています。私は。.....だから彼女を遠ざけたいんです」
「いや。将来って.....分からないんだが。決めつけちゃダメ.....」
「分かります。貴方は将来、外国に行ってしまいます」
「.....母親の事?え.....何でそれ.....」
私はあくまで全てを知っています。
貴方は.....勇気先輩と不遇な別れ方をする。
それをするぐらいだったら貴方が勇気先輩と付き合うか。
それとも私が勇気先輩と付き合うかしたいです、と真剣な顔をする長富さん。
何か背筋が凍る気がした。
「.....私が大好きなワトソンと不遇な別れ方をするってどんな.....」
「先ずですがこの部屋は空き部屋になります。そして貴方は.....二度と会えなくなる。勇気先輩に」
「.....」
「私は勇気先輩の彼女。つまり吉田美奈保が浮気をするのでそれを阻止したいんです」
「そうなのか?」
「私は2年後の未来からやって来ました」
私はまだ疑うが。
でもそこまで知っているのであれば。
この子は本当に2年後から来たのかもしれない。
もしかしたらただのストーカーかもしれないけど。
だけど。
ワトソンとの関係の気持ちが優ってしまった。
「.....じゃあ吉田さんと付き合うのを阻止したいんだね?」
「貴方はワトソンくんが好きなんじゃないですか?だったらこれはチャンスだと思いませんか?」
「.....」
私はワトソンと絶対に付き合いたい。
だから多少の意地悪に手を染めても良いよね。
その為だったら。
私は考えながら、私はどうやったらワトソンと付き合えるかね、と聞いてみる。
すると顎に手を添える長富さん。
「私が思うに吉田美奈保は今はまだ振り向いてもらえるチャンスが無いです。だからその間に勇気先輩を誘惑して付き合っちゃいましょう」
「つまりワトソンを奪っちゃうって事かね」
「そうですね。奪ってしまって.....そして付き合いましょう。2年後を変えたいんです」
「貴方は悪い子だね。だけど.....そうだね。私はワトソンが好きだから。その分.....全力で挑みたい」
「では共同作戦ですね。頑張りましょう」
ニコッとする長富さん。
私はそんな顔に、時に君はワトソンが好きなのかね?、と聞いてみる私。
すると長富さんは、当然ですが好きです、と躊躇わず告白した。
その事に私が衝撃を受ける、が。
その言葉に、ですが、と切り出した長富さん。
「私は誰かから勇気先輩を奪うつもりはないです。.....私に振り向いてくれたら良いなって思うぐらいです」
「.....長富さん.....」
「私はあくまで目標は吉田美奈保を倒す事です。全ては成り行きなので」
「.....」
倒すって表現が激しすぎるが。
もし本当に吉田さんが2年後に全てを裏切るなら。
だったら今から倒しても良いかもしれない。
これを悪く思わないでほしい。
だって私だって。
ワトソンを取られたくない。
負けたくないんだから。
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