第5話 クマのぬいぐるみ

☆山田愛サイド☆


私はワトソンの事をよく想っている。

段々と自覚してきたが。

これは恋ではないかと思えてきた。

だけど私は.....、と思う。


何故なら彼には好きな相手が居るのだ。

彼はその。

その彼女によくアピールをしている。


だから私には勝ち目が無いだろうとそう思っていたのだが。

彼は最近思いが変わった様だった。

私にももしかすると勝ち目はあるのかもしれない。


「わ、ワトソン」

「何だ?ホームズ」

「次は何か体を動かしに行かないか」

「え!?俺スポーツ苦手だぞ」

「構わないぞ。私も苦手だ。だけどい、一緒に.....」

「.....そうか。.....具体的に何をするんだ?」


そ、そうだな.....、と私は考えていると。

目に可愛いぬいぐるみが飛び込んできた。

それは熊さんのぬいぐるみだ。

とてもしぶかわだった。


イカンイカン。

私はホームズなのだから。

そんなものに興味を持っている場合ではない。

考えながら歩いていると。

うん?あのぬいぐるみが欲しいのか?、とワトソンが言ってきた。

へあ!?


「ま、まさか!私はあんなものには興味はない!」

「そう言って強がっても仕方がないぞ。.....分かった。獲るから待ってろ」

「わ、ワトソン!そんなもの.....」

「お前な。強がっても意味ないって。女の子なんだから」

「.....」


ワトソンはそう言いながら100円を投入する。

本当に全く。

だから私は.....、と思うのだが。


彼を.....、と。

そう思いながらクレーンゲームを見る。

すると大きなサイズのクマのぬいぐるみは300円で獲れた。


「ワトソン。お金が.....」

「そうか?じゃあそのぬいぐるみを返してくれ。俺が使うんで」

「えっと.....じゃ、じゃあ、し、仕方がないな!男にはこう言うのは似合わない!だったら私が使おう!」

「.....そうか」


ワトソンは笑みを浮かべながら私を見る。

私はクマのぬいぐるみを見ながら、えへへ、と笑みを溢す。

なんて幸せな時間なのだろうか。

無理矢理に誘ったけどだけど私には.....私は。

とても幸せだ。


「でもその大きなぬいぐるみを持ったままじゃあ何もできないな」

「そ、そうだな.....じゃ、じゃあウチに来ないか」

「は!!!!?」

「ぬ、ぬいぐるみのコレクションを見せたい」

「何でいきなりまたそういう事に.....」

「お礼もしたい。.....ダメか?」


そ、それに私は貴方に見てもらいたい。

思いながら私は縋る様な目で見る。

するとワトソンは、わ、分かったよ、と返事をしながら。

少しだけだぞ、と赤くなった。

私はパアッと明るくなる。


「わ、分かった!ありがとう!ワトソン!」

「全くお前は.....」

「予定変更だな!私の家にレッツゴーだ!」

「.....」


ワトソンは何かを考える仕草をする。

私はその姿を見ながら、?、を浮かべていたが。

それよりもワトソンが家に来るのが嬉しくて堪らなかった。

そして私達は家に行く。

私の実家はマンションであるが。


☆田所勇気サイド☆


ホームズの家に行く事になった。

俺は複雑な心中のまま.....ホームズの家を見上げる。

マンションである.....当時と何も変わらないな。

あの日。


ホームズが居なくなった家と。

そして扉を潜り抜けてから。

そのまま俺は2年前の光景を見る。

ホームズは笑顔で案内してくれるが。

俺は全て知っている。

だけど.....。


「この部屋は住みやすそうだな」

「そうだな。.....君はこういう家は好きかね」

「好きだな。日当たりも良いしな」

「そうか.....良かった」


ホームズは、お茶飲むか?、と聞いてくる。

クマのぬいぐるみを置きながら。

俺は、ああ。お構いなく、と返事をしながら周りを見渡す。

そして、落ち着くな.....、と考える。

ここが将来空き部屋になるとは誰が予測したものか、だが。


「ところで、わ、ワトソン」

「.....何だ?ホームズ」

「た、例えば好きな食べ物とかあるかね」

「は?好きな食べ物?え?何でいきなり?」

「い、いいから答えたまえ」

「.....???.....そうだな.....好きな食い物か.....俺は生姜焼きが好きだが」

「そう.....そ、そうか。分かった」


メモを必死に取るホームズ。

俺は目をパチクリしながら、何をしているんだ?、と聞いてみるが。

た、探偵ごっこさ!!!!!、と慌ててホームズは言い放つ。

何だいきなり。

探偵ってそんな感じだっけ?

キッズ探偵しか分からないから。


「わ、ワトソン」

「.....何だ?次から次に。記者かお前は」

「私は魅力的かね」

「.....お前何言ってんの?!」

「い、いいから答えたまえ!!!!!」


怒るな!

何だこの誘導尋問的な!?

俺は赤くなりながら慌てる。


そしてホームズの全身を見る。

魅力ってメッチャ魅力ではあるな。

何でかってメッチャな美少女じゃんかよ。


「答えにならないんだが.....でも率直に。お前は魅力あるよ。きっとお前と付き合った男子は心から楽しいだろうな」

「そ、そうか。.....しかし君以外は.....」

「は?今何つった?聞こえない」

「良いから気にしないでくれたまえ!!!!!」


さっきから逆ギレホームズさん。

何でだよ。

思いながら俺は目をパチクリする。

そしてホームズは、では!!!!!、とメモを直してから台所に去って行った。


俺はその姿を見つつ窓から顎に手を添えて外を見る。

うーん。女子の心は分からん。

それに.....こんな事は元の世界というか。

現実世界であったっけ?

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