第4話 元の世界の絶望と今の世界の希望と

☆田所勇気サイド☆


後悔したくないと俺は必死に長富を救った。

長富がイジメられているのは2年後に知ったのだ。

だからこそ今助けた。

後悔はない。

これで時空が時間が全てが歪んだとしても後悔はない。


「やあやあ。お待たせ」

「来たか。ホームズ」

「ホームズっていうのは止めてくれないか。私はそんな天才ではない」

「お前がホームズみたいな事をするからな。あだ名的にはちょうど良いんじゃないか」

「いやいや。私はそんなに天才ではないよ。本当に」


そして恥ずかしがるホームズ。

そんな姿に校門の柱から背中を浮かせてからホームズを見る。

ところで推理ゲームはどこに買いに行くんだ、と聞いてみると。

うん?、という感じで目をパチクリしたホームズ。

ん?なんだ?


「そんなもの嘘に決まっているだろう。推理ゲームを買いに行くなんて罰ゲームかな?」

「じゃあお前は何で俺を呼んだ」

「そ、それは.....良いじゃないか。ちょっと付き合いたまえ」

「付き合いたまえって。いや.....」


ゴチャゴチャ吐かすな、と言ってからホームズはいきなり俺の手を引いた。

それから俺と至近距離で目が合う。

な、何だってんだ。

俺は慌てながらホームズを見る。

ホームズは、ダメか?付き合ってくれないか?、という感じにいきなりしおらしくなってから俺を見てきた。

いやいやダメって事はないけど。


「ホームズ。何で俺に嘘を吐いた」

「そ、それは.....色々あるから」

「.....???」

「ま、まあ良いじゃないか!助手くん!付き合いたまえ」

「意味が分からないんだが」


そして俺はホームズに手を引かれて無理矢理な形で歩き出す。

普通は逆じゃね?、と思ったのだが。

ホームズは歩くのを止めない。

行き着いた先は.....クレープ屋だった。


「で、では先ずはクレープを交換し合おう」

「.....いや待て。何でだよ。2個買ってくれよ」

「それではお金がかかるだろう。だから2個にするのだよ助手くん」

「いやしかし.....それは間接キス.....」

「.....恥ずかしい事を言うな.....」


怒るホームズさん。

いやお前が恥ずかしい事をしようとしているんだからな?

何で俺は怒られているのだ?意味が分からない。


考えながら俺はホームズを見る。

ホームズはバナナクレープを買った。

そして、はい、と千切ってから分けてくる。

あ、成程。

これなら間接キスではないな。


「じゃあ俺は何のクレープを買おうかな。.....まあチョコかな」

「それは食べたいと思っていた。買ってくれたまえ」

「お前何様よ」

「食べたいのだから」

「.....分かったよ.....」


全くコイツは、と思いながら店員にクレープを注文する。

それから焼きたてのクレープを貰ってから食べようとした時。

私にはくれないのか、とホームズが言った。

ああそうだったな、と思いながらホームズに千切ってやろうとした時。


「待て。そのままくれ。ソースが溢れたらどうする気だ?もったいないじゃないか」

「.....何でだよ。お前だって千切ったろ。それだったら間接キスに.....」

「間接キスなら私は気にしない」

「お前が気にしなくても俺が気になるわ!!!!?」

「私は気にしない.....何故なら君だからだ」


ワケ分からないんだが。

全く、と思いながら俺はクレープを差し出す。

そして小さく食べたホームズ。

俺は赤くなりながら溜息を吐く。

それから食べた。


「.....味がしないぞ。お前のせいで」

「私は何もしていない。あくまで間接キスをしただけさ」

「それを宣言するな。お前は仮にも美少女なんだぞ。良い加減にしろ」

「.....ふあ?」


.....ふあ?

俺は、?、を浮かべながらホームズを見る。

ホームズは真っ赤になってから汗をかいていた。


完全に予想外の事を言われた、的な感じで。

いやそこで真っ赤になるのかよ。

そんな事を思いながら俺はホームズを見る。


「わ、私は可愛いのか?」

「.....それはそうだろ。お前マジに美少女だしな」

「そ、そうか。それは.....嬉しい」

「.....???」


訳が分からない。

考えながら俺はクレープを見る。

妙な沈黙が俺達の間に流れる。

するとゆっくりと深呼吸してホームズが口を開く。


「家との関係がちょっと捻れているから。久々に嬉しい事を言われた気がする」

「.....そこまで嬉しいのか?意味が分からんな。俺はあくまで.....」

「君はいつもそうだ。色々な事を救う。君は.....本当にいい助手だ。ワトソンくん」

「.....」


笑顔になるホームズ。

その顔を見てから俺は複雑な顔をする。

何故かと言えば。

元の世界でこの笑顔を救えなかったから、だ。


『さらばだ。助手.....いや。勇気。永劫の別れだ』


その事を悲しげな顔で去り際に言われた時。

俺はこの世の終わりを感じた。

そして.....絶望に明け暮れる日々が来たのだ。

だから。

そう思って俺はホームズを強く抱きしめる。


「ちょ!!!!?何をする!!!!?」

「今度は守るからな」

「.....え!?え!?」

「.....御免な。ホームズ。いや。愛」


ホームズの体はとても暖かった。

その事を感じながら。

俺は固く誓う。

そして、と思いながら俺はホームズから離れる。


「.....助手くん?」

「後悔はしたくない。.....だからこそ頑張るからな。ホームズ」

「.....???」


ホームズは真っ赤のまま俺を見る。

2年後を知っているから。

だからこそ、と思う。

今を。

未来を。

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