第40話古城の魔術師アンバー4
「最初からこうすりゃ良かった……。ミナトのスキルを聞いたとき、オレだって思い浮かんだんだぜ。確実に攻略できるってなぁ。けどよぉ、SP切れ待ちは、回避か防御が必要以上にあってこそ成り立つ戦略……。確実に勝てるかもしれねえが、犠牲も確実に出る。だからミナト、提案しなかったんだろ?」
「クロム……」
「言うな、これ以上は何も言うな。非情になれなかったおまえは甘かったし、オレたちも甘かった。誰も悪くねえ。今後もまた一緒に戦えるんじゃねえかって思ったらよぉ、そのプランをメインに、なんて言えねえよな、やっぱ」
【スターレイ】は本来何発も撃てないスキル。
城の中にいた【シャドウ】だって、数に応じてSPを消費する。
ここに辿り着いたとき、アンバーのSPは本来の数値より大幅に低かった。
「何をごちゃごちゃとッ!」
怒りを滲ませ、アンバーが【マジックロッド】をクロムに振るう。
幾分も残っていないHPがついに底を突いた。
「クク、いい吠え面だぜ。くたばれクソ女」
クロムがやり遂げた男の改心の笑みを浮かべ、消えていった。
「クロム……!」
クロムは、俺がアンバーをぶちのめしてくれるって期待してくれていた。
だからこそ、【盾持ちの矜持】で【素早さ】を下げたんだ。
「イライラするわッ! 羽虫ごときが、私をここまで煩わせるなんて!」
ここはダンジョンではなく、アンバーはここのモンスターでもない。
俺たちと同様、体を休めるかアイテムを使わない限り、SPは回復しない。
「アンバー、今日【スターレイ】を何発撃った? 出した【シャドウ】の数は? 【ソードランス】も【スラッシュ】も【クロスファイア】も、どれだけSPを消費したと思ってる」
アンバーは、はっ、と何かに気づいた。
「あのとき、丘をウロチョロしていたのは――」
「おまえに無駄打ちさせるためだ」
「ふざけた真似をッッッ! 」
怒りに染まるアンバーは、杖で俺を攻撃してくる。
「当たるわけないだろッ! おまえをそんなキャラに育てた覚えはない!」
簡単に回避して、ついに間合いに捉えた。
「先生!」
「うん!」
【邪法】【鈍足】【変調】の三種が同時に発動する。
加えて、俺は【ハヤブサ】【鋭利な一撃】【騙す】を使う。
「オォォォォラァアアアア!」
腹の底から雄叫びを上げて毒剣と棘剣を振るった。
キィンとクリティカル確定音が聞こえた。
……みんな、聞こえるか?
これが、俺が送れる最高の鎮魂曲だ。
二剣がアンバーを貫く。
「ギェエヤアアアアアア!?」
<アンバーに89のダメージを与えた>
<アンバーは[出血]した>
<アンバーは[出血]で10のダメージを受けた>
<アンバーは[毒]になった>
<アンバーは[毒]で12のダメージを受けた>
「まだまだ行くぞマグロ女ッ!」
剣を足で引き抜き、再び【鋭利な一撃】を使った。
<アンバーに35のダメージを与えた>
<アンバーは[出血]で14のダメージを受けた>
<アンバーの[毒]は[猛毒]になった>
<アンバーは[猛毒]で33のダメージを受けた>
「イヤァァアアア!?」
アンバーの耳障りな悲鳴が大広間に響いた。
【鈍足】と【盾持ちの矜持】による【素早さ】減少が刺さってる。防御力が上がっている状態だが、【鋭利な一撃】は防御無視の攻撃だ。
俺は一切手を緩めなかった。
<アンバーは[出血]で18のダメージを受けた>
<アンバーは[出血]で22のダメージを受けた>
<アンバーは[出血]で26のダメージを受けた>
攻撃のたびに、たった1の物理ダメージと増えていく【出血】ダメージ、そして固定の【猛毒】効果でHPがガクン、ガクン、と減っていく。
【出血】効果で血だらけになり、アンバーが【猛毒】によって大量に吐血する。
……そして、HPがついに尽きた。
俺ははぁはぁ、と息を切らしながら、二剣をホルスターにしまい、消えていくアンバーに言った。
「おまえが最強の後衛なのは、あくまでも、プレイヤーが俺だからだ。……まず冷静さが足りない。次に謙虚さが足りない。そしてリスペクトもマナーも足りない。判断能力も戦闘センスも足りない。――スペックゴリ押しの火力バカだから、こんなふうに足元をすくわれるんだよ」
甲高い断末魔を残して、アンバーは消え去った。
<潮崎湊は120000経験値を得た>
<レベルが4上がった>
<スキル[盗賊の嗜み]の熟練度がD-になった>
<スキル[騙す]が[猫騙し]E-に進化した>
<スキル[ハヤブサ]の熟練度がE+になった>
<スキル[鋭利な一撃]の熟練度がE+になった>
<アンバーから[アンバーのマジックロッド]と5000リンを得た>
――――――――――
潮崎湊
職業:盗賊
LV:37
HP:163/163
SP:11/118
攻撃:66+15+11
防御:46-4
魔攻:39
魔御:38+11
素早さ:75+11+3+17
称号:豪胆な盗賊 執念の炎 蜃気楼 毒殺犯 エンジェルキラー 切り裂く者
スキル:盗賊の嗜み(D-)猫騙し(E-)火遊び(C+)盗賊の審美眼(B-)ハヤブサ(E+)鋭利な一撃(E+)二剣持ち(E-)
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――――――――――
猫騙し
対象に少し隙を作る。
スキルにより隙ができている間だけクリティカルダメージが一五%上がる
――――――――――
※作者からのお知らせ※
新作「錬金術師の山暮らしスローライフ ~死のうと思って魔境に来たのに気づいたら快適にしてた~」を連載しています!
こっちとは違って物作りスローライフファンタジーです。
気になったらこちらも読んでやってください<m(__)m>
リンク↓↓↓
https://kakuyomu.jp/works/16818093089459482667
よろしくお願いいたします。
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