第36話出血ダメージ

 紅の騎士を倒した余韻も一段落して、俺たちは城内に侵入する。


「さっきの武器って、そんなに良かったんだ?」


 青ちゃんが尋ねてきたので、俺はうなずいた。


「はい。剣士系の職業と【盗賊】は共通のスキルを覚えるんですが――」


 俺は角に差し掛かったので足を止めた。

 こっそり通路を覗くと、顔のない影人間のような魔物が何体もあたりをうろついていた。


――――――――――

シャドウ

LV:40

HP:1200

MP:0

――――――――――


「湊くん、あれは?」


 青ちゃんもひょこっと顔を出した。


「アンバーがスキル【シャドウ】で召喚した影人間です。一体の強さはさほどありませんが、HPが高くて、まともに戦えば消耗戦を強いられることになります」

「私たちは絶対避けなきゃだね……」

「はい」

「他に道はないの?」

【白魔術師】が訊いた。


「地下から来ると、この道は必ず通らないといけないんです。だから【シャドウ】を配置しているんだと思います」


「なるほどね」と【白魔術師】が渋い顔をする。


「じゃあ行くっきゃねえな」


【聖騎士】の一声で、みんなが覚悟を決める。


 俺たちは、紅の騎士戦同様に、連携して敵に襲い掛かる。


 一体を速やかに速やかに撃破すると、その音に釣られた敵が二体、三体と姿を見せた。


 そいつらを各個撃破。


 倒しても倒してもシャドウが途切れることがない。


 徐々に疲れていく一方で、俺と青ちゃんのレベルが低かったことで、ぐんぐん成長していった。


 協力したおかげで敵が楽に倒せて、レベルが3上がって待っていたあのスキルを得た。


――――――――――

潮崎湊

職業:盗賊

LV:33

HP:143/143

SP:70/106

攻撃:54+15

防御:36-4

魔攻:29

魔御:28+11

素早さ:59+6+3+17

称号:豪胆な盗賊 執念の炎 蜃気楼 毒殺犯 エンジェルキラー

スキル:盗賊の嗜み(E+)騙す(A+)火遊び(C+)盗賊の審美眼(B-)ハヤブサ(E)鋭利な一撃(E)二剣持ち(E-)

――――――――――

――――――――――

二剣持ち

武器攻撃力の合計が自身の攻撃力50%までなら両手に武器が持てる

両手に武器を持った場合盾装備不可

――――――――――


 剣士系と【盗賊】が覚える共通スキル。

 これで棘剣も装備できるようになった。


【二剣持ち】は、常時発動型スキル。熟練度が上がるにつれて、武器攻撃力の上限が上がっていく。


 攻撃速度と手数を重視した戦法を取らない限り、まず必要ないものだ。

 剣士系で二刀流をやっている人もいるが、ビジュアル重視の面が大きく、ガチで戦うときの実用性は低い。

 盾を捨てるというのは、結構なデメリットでもある。


 対して俺は、攻撃力なんて二の次。防御も捨ててる。

 手数を多く出し、その分母の多さで異常状態にして敵を苦しめる戦法だ。


 さっそく利き手の逆に棘剣を装備する。

 棘剣は、毒剣よりも刀身が短く、手の平を目いっぱい広げたほどしかない。


 またシャドウが出現すると、俺は真っ先に攻撃を仕掛けた。

 攻撃寸前に青ちゃんの【邪法】が発動し、不運がより起こりやすくなった。


<シャドウに24のダメージを与えた>

<シャドウは[出血]した>

<シャドウは[出血]で15のダメージを受けた>

<シャドウは[毒]になった>

<シャドウは[毒]で10のダメージを受けた>


 敵が緩慢な動作で攻撃する間に、俺はさらに攻撃を続けた。

 異常状態【出血】は、効果時間内に攻撃を当てれば当てるほど猛威を振るう。


<シャドウに24のダメージを与えた>

<シャドウは[出血]で17のダメージを受けた>

<シャドウは[毒]で10のダメージを受けた>


「ボォォウウウ……!?」


 シャドウから黒い液体がドクドクと流れ出ていく。

 俺は攻撃の手を休めず、次々に攻撃を当てていった。


<シャドウに26のダメージを与えた>

<シャドウは[出血]で19のダメージを受けた>

<シャドウの[毒]が[猛毒]になった>

<シャドウは[猛毒]で27のダメージを受けた>


<シャドウに25のダメージを与えた>

<シャドウは[出血]で21のダメージを受けた>

<シャドウは[猛毒]で27のダメージを受けた>


 味方の攻撃によって敵が倒されるとステータスが更新された。


<潮崎湊は700の経験値を得た>

<スキル[二剣持ち]の熟練度がEになった>

<称号[切り裂く者]を覚えた>

<シャドウから10リンを得た>


――――――――――

切り裂く者

出血の発生率をわずかに上げる

――――――――――


 ふう、と俺が一呼吸すると、棘剣の威力にみんな驚いていた。


「それって、そんな強いのかよ……」

「出血させてこその攻撃だな。普通にやってたらあんな簡単に異常状態になんないから」

「【呪術使い】との相性めっちゃいいんだな」


 相性めっちゃいい、と言われて、俺は気をよくする。


「わかっていただけたようで何よりです」

「何よりですっ」

 青ちゃんも嬉しげだった。


「敵にしたくねえな」

「まったくだぜ」


 うへぇ、と嫌な顔をするのもわかる。

 対人戦で相手がこのスタイルなら、なるべく戦いたくない。

 それくらい、面倒くさくてイヤらしい戦法なのだ。

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