第18話ラッキースケベと死亡フラグ
俺は【天使の指輪】を青ちゃんに渡すことにした。
「先生。これを使ってください。魔防とSPの上限が上がります」
「わぁ。すごく綺麗……」
青ちゃんは俺の手の平にある指輪をまじまじと見つめる。
「いいの? すごくレアアイテム感あるよ?」
「先生に使ってほしいんです」
「湊くんだって、SPは多いほうがいいんじゃないの?」
「仰る通りです。ですが、俺は毒剣があるおかげで、通常攻撃で毒状態にできます。要は確率さえ上がれば、楽に敵のHPを削れます」
俺が理想とする【盗賊】の戦術は、青ちゃんの【呪詛】が要となる。
青ちゃんのSP切れは、長期戦を意味するし、即死リスクも大きく上がることになる。
説明すると、青ちゃんは納得してくれた。
「ありがとう。もらうね。……あ、でも、渡し方ってあると思うの。指輪だよ、指輪」
含みを持った言い方をした青ちゃんは、ちらちらと横目で俺をうかがう。
「じゃあ、失礼します」
「ど、どうぞ」
手を握り、サイズが合いそうな薬指を選ぶ。
「え、あ、く、薬指!?」
「ぴったりっぽかったんで。ほら」
するすると指輪は薬指に収まった。
「~~~~~」
両手で顔を覆った青ちゃん。言葉にならない悲鳴を上げているらしく、体をプルプル震わせている。耳まで真っ赤だった。
手を顔から離して、装備された指輪を眺める青ちゃんは、ちょっと幸せそうだった。
ぷるぷる、と顔を振った青ちゃんは、ぱしぱし、と自分の頬を叩いて気合を入れる。
「……私も湊くんを守れるんだね」
「俺にとって【呪詛】は勝率を大幅に上げる必須スキルです。……頼りにしてます」
「任せてっっっっっ!!」
うわ、びっくりした。いきなりドデカボイス。
青ちゃんから、うっすらとオーラみたいなものが見える。ゲームのシステムにそんなのないから、超やる気になったってことなんだろう。
「進みましょう」
ゲームとリアルで少し違う点もあったが、ダンジョン内は概ね同じで、マップが頭に入っているため迷うことはなかった。
倒せないと奥に進めない、というような敵だけ倒し、省エネに務める。
クエストの『エンジェルの討伐』を達成した頃には、俺と青ちゃんは一八レベルにまで上がっていた。
その間、回収クエストも忘れない。
【天使の日記】【天空城の設計図】のふたつをそれぞれ集め、残るクエストは最奥のハイエンジェル討伐のみとなった。
「回収したアイテムってどういう物なの?」
「アイテム自体に効果はありません。シナリオを進める上で必要というだけで、シナリオを無視している俺たちからしたら、ポイントラリーのチェックポイントみたいなものです」
へえ、と青ちゃん。
シナリオでは、魔族撃退のヒントに繋がるものがいくつかあって……という流れになる。
ハイエンジェルが待つ大広間に近づいていくと、RPでもある貴賓室に到達した。
アンティーク調のベッドとソファがあり、部屋の奥にはシャワー室がある。
「休んだら、また少し敵を倒してレベルを上げましょう」
「うん」
一休みするためのタオルやバスローブが完備されている。ここだけは冒険者に都合よくできていた。
先に青ちゃんがシャワー室に入ると、ザァァァァ……という水音が室内まで聞こえてくる。
「……なんか、ラブホみたいだな」
行ったことないけど、こんな感じなんじゃないか……?
そう思うと、なんかそわそわしてきた。
中から音が聞こえなくなると、代わりに青ちゃんの声がした。
「湊くーん、タオル忘れちゃった」
「あ、今持っていきます」
二枚ほど掴んでシャワー室に入ると、すぐの脱衣所のカゴの中に、青ちゃんの服があり脇に存在感抜群のパンツとブラジャーが丁寧に畳んでおいてあった。
「うぶふっ!?」
いきなりのエンカウントに目をそらすのが遅れた。
色は白でところどころ花をあしらった薄ピンクの刺繍が印象に残る。……青ちゃんらしい、可愛らしい感じの下着だった。
見てない見てない。俺は何も見てない。
シャワー室はすぐそこで、予想外なことに、シャワー室はガラス張りとなっていた。
青ちゃんは、雫を滴らせる白い肌をさらけ出したまま、髪の毛を絞っていた。
「うぶふっ!?」
下を向いているせいで……いや、おかげで俺に気づく気配はない。
滑らかな曲線を描く大きなおっぱいと桜色の乳首。ハリがありそうな小ぶりなお尻とほっそりとした脚……。
目を奪われて硬直したのも束の間。俺は我に返った。
バレたらヤバい!
俺は大慌てで脱衣所まで引き返し、出入口のあたりにタオルを置いて逃げた。
「た、た、タオル置いといたんで!」
「うん、ありがとー」
気づいてないな、よしよし……。
危うく鼻血吹いてぶっ倒れるところだった……。
青ちゃんの肢体が焼きついて離れない。
リアルで女の人の裸なんて初めて見た。
しかも青ちゃん。
「死亡フラグか? 俺、ハイエンジェルにプチっとやられて死ぬのか……?」
青ちゃんと一緒に冒険できて、同じベッドにも入ったし混浴もしたし裸も見られた。
あ……俺の人生、悪くなかったんじゃないか?
悟りを開きそうになっていると、青ちゃんがシャワー室から出てきた。
ほかほかの青ちゃんは、バスローブを着て髪の毛をタオルで拭いている。
「城の中が埃っぽかったから、すっごく気分転換になったよ。気持ちよかったぁ」
「そうですか。ありがとうございました」
「んん……? 湊くんもどうぞ」
「はい」
促された俺は、シャワーをさっさと終わらせ、服を着て部屋に戻る。そこには、ベッドで眠っている青ちゃんがいた。
純粋な女神みたいな健やかな寝顔だ。
「やっぱ死ぬのなし。一緒にいる限り、俺が青ちゃんを守らないと」
俺はソファで横になってひと眠りした。
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