第17話室内であれば回避は自由自在
「ごめんね! 一日無駄にしちゃって!」
天空城へ向かう坂道を登っている途中のことだった。
二日酔いから完全復活した青ちゃんは、もう何度目かわからない謝罪を口にした。
「いいですよ。先生が宿を支払ってくれているわけですし、急ぐ旅でもないですから」
「ううう、そうだけどぉ……オトナとしてどうなのそれって思ってさ……」
反省している様子だった。
昨日、部屋に入ろうとしたら断固拒否されてしまった。今の顔は見せられない、と。前も見たと言ったけど、「今日はとくにヤバいから」とのことだった。
そして今日。
一日ぶりに見る青ちゃんは、俺がよく知るキラキラした美貌に戻っていた。
「嬉しいことや悲しいことががあったりすると、つい、飲み過ぎちゃうの。悪いクセなんだけどね……」
「そんなことがあったんですか?」
ちら、と俺を見て、「内緒」と青ちゃんは言って頬をゆるめる。
坂道を登りきると、朽ち果てた城門と城壁が見える。城にはヒビが入り、壁にも穴が空いていた。
「なんか、思ってたラピュタと違う……」
「正式名は『陥落せし天使の居城』です。魔族に城を落とされて、残った天使たちが魔物化してしまった……という設定です」
「へえええ。凝ってるんだねぇ」
城門前に行くと、【天空城への招待状】のおかげでゆっくりと門が開かれていった。
「魔法を使う敵もいます。俺がターゲットになるよう立ち回りますが、気をつけてください」
「うん、了解」
このダンジョンのボス、ハイエンジェルのレベルは三〇代前半。
今のままじゃ全然足りないが、【呪術使い】がレベル一五になればあのスキルを覚える。
【盗賊】とのコンビであれば二〇レベルでも十分通用するはず。
コウモリ型の魔物やネズミ型の魔物が登場するが、いずれも格下で俺と青ちゃんの敵ではなかった。
俺たちコンビの弱点は、継戦能力の低さだ。
SPありきの戦闘になるため、消耗しないように、ダンジョン序盤は物理攻撃中心に戦う必要があった。
RP(レストポイント)はあるが、まだ遠い。
戦闘を挟みながら、迷うことなく寂れた通路を進んでいく。
すると、ピィ――――ン、と聴覚検査と似たような音がする。
「何、この音?」
「来ました。エンジェルです」
角を曲がると、扉の前に敵が一体いた。
――――――――――
エンジェル
LV24
HP222
SP89
――――――――――
大人ほどの背丈で、頭には傷がいくつも入った銀のヘルムを被っている。薄汚れた翼が背中から生えており、宙に浮いている。
手には、刃こぼれした銀の剣を握っていた。
あれが後衛が持つ武器であれば魔法を使ってくるが、こいつは近接型だ。
「普通に出現してますが、俺たちより十分格上です。気を引き締めていきましょう」
「オッケー!」
青ちゃんにお馴染みのデバフスキル【呪詛】と【不協和音】を使ってもらう。
俺は接近と同時に【盗賊の審美眼】で盗む成功率を上げ、【強奪】で先制攻撃をしかける。
<[薄汚れた羽][錆びた銀剣]のいずれかを盗んだ>
<エンジェルに15のダメージを与えた>
俺からすると、【盗賊の審美眼】は強スキル。選択肢に出てくるアイテムはランダムだ。
記憶が正しければ、盗めるアイテムはあと一種類あるはず。
「ファァァァァ――ン」
ふわっと移動してきた敵が、ズバン、と斬りつけてくる。
屋内は【≪不滅≫の粘糸】が使えるため、回避は容易かった。
天井まで瞬時に移動し攻撃をかわすと、サインを送り、また俺と青ちゃんは初手と同じスキルを敵に使った。
<[薄汚れた羽][天使の指輪]のいずれかを盗んだ>
<エンジェルに15のダメージを与えた>
よし、ほしかったアイテムだ。
【天使の指輪】は、このレベル帯では、盗むでしか所持できないアイテムのひとつだった。
あとは、SPを温存しながらエンジェルを攻撃する。
青ちゃんは俺がスキルを使わないとなると、やることも少ないので声援を送ってくれていた。
【呪詛】なしではなかなか毒にならず、クリティカルも出ず、長い時間をかけてHPを削り切った。
<潮崎湊は580の経験値を得た>
<レベルが1上がった>
<スキル[強奪]の熟練度がA-になった>
<スキル[盗賊の審美眼]の熟練度がEになった>
<エンジェルから[錆びた銀剣]と三七〇〇リンを得た>
――――――――――
潮崎湊
職業:盗賊
LV:16
HP:56/56
SP:28/33
攻撃:17+15
防御:11
魔攻:7
魔御:8
素早さ:28+4+3
称号:豪胆な盗賊 執念の炎 蜃気楼 毒使い
スキル:強奪(A-)騙す(B)火遊び(D+)盗賊の審美眼(E)
――――――――――
【盗賊の審美眼】を使って盗んだため、選択画面が現れ、【薄汚れた羽】と【天使の指輪】を選択した。
――――――――――
薄汚れた羽
防具の素材になる
――――――――――
――――――――――
天使の指輪 魔防+2 SP+5
――――――――――
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