第14話真価を発揮する毒剣
「ブフォォォォォアアアア――――ッッッ」
新たな侵入者を発見し、アークバイソンが雄叫びを上げた。
リアルで目の前にするとかなり迫力がある。尻込みしたくなる気持ちもわかった。
「先生、いつも通り、俺のサインだけ見ててください!」
そう言い残して俺は真っ直ぐ敵へ向かっていく。
相手は典型的なパワー型。
【≪不滅≫の粘糸】はここでは使えないが、俺の【素早さ】があれば攻撃回避は苦労しない。
敵が大斧を振り下ろしてくる。
俺はステップを軽く踏んで進行方向を変え、大人二人分の身長はあるアークバイソンの足元に入り込む。
【アラクネの毒剣】を抜き、足の甲やスネを切り刻む。
<アークバイソンに3のダメージを与えた>
レベル差や敵の防御の高さのせいでこれだけしか通常ダメージが入らない。
俺を潰そうと足で踏みつけてくるが、これも簡単に避けられた。
青ちゃんにサインを送り、【呪詛】を使ってもらう。発動を確認した直後、【強奪】を使う。
一発で当たりを引きあてた。
チャリン、と音が鳴り、システム音声が聞こえる。
<アークバイソンから[バイソンの角]を盗み、12のダメージを与えた>
敵が地を這うような軌道で大斧を振る。
飛んで大斧を踏み、もう一度ジャンプした。
一瞬で敵の視界から消えてみせると、【呪詛】の効果中であることを確認し、【火遊び】を使う。
【アラクネの毒剣】が緑の光と赤い炎に包まれる。
「食らえ!」
頭に食らわせた一撃。
攻撃自体は大したことがないので、敵は声も上げなかった。
<アークバイソンに16の炎ダメージを与えた>
<アークバイソンは[火傷]を負った>
<アークバイソンは[火傷]で5ダメージを受けた>
<アークバイソンは[毒]になった>
<アークバイソンは[毒]で8ダメージを受けた>
よし、決まった。
「ブフウウウウウ!?」
不快そうにアークバイソンは身動きして俺をギンと睨む。
敵は、空手の腕とバカでかい斧を軽々と振り回しながら攻撃してくる。
俺はヒットアンドアウェイを徹底して、細かく斬って下がったり逃げたり回避したりする。そして攻撃の隙を見つけては再び接近し、細かく斬って――それの繰り返し。
これが【盗賊】の正攻法だ。
離れた場所から戦況を見守る青ちゃんに、再びサインを送る。
【呪詛】と【変調】を使ってもらい、不運の時間を延長してもらった。
何度目かの近接戦闘を仕掛けると、キイン、と音が鳴り、クリティカルが決まる。
<アークバイソンに25のダメージを与えた>
<アークバイソンの[毒]は[猛毒]になった>
<アークバイソンは[猛毒]で15のダメージを受けた>
<アークバイソンは[火傷]で5のダメージを受けた>
毒状態の敵にもう一度毒状態にさせると、より強い効果のある【猛毒】に進化するのだ。
単独で火力が出しにくい【盗賊】にとって、これが非常に助かる。
俺は続いて【強奪】を使う。
二回連続してミスすると、三度目で成功した。
<アークバイソンから[天空の斧]を盗み、12のダメージを与えた>
【天空の斧】は素材用に分解してもいいし、売っても高価な値がつく。
これが使えるのは、前衛の【重騎士】【盾歩兵】などヘビーアームズと呼ばれる職業。もし俺がそうだったら、泣いて喜んでいただろう。
[ブオ、ブオッブォウ!」
距離を取って回避に専念しながら、【火遊び】で火炎属性攻撃を繰り返す。
【火傷】は途中で消えてしまったが、【猛毒】は継続中。
こっちは治さない限りずっと続く。
不安だったらしい青ちゃんが、弾んだ声を上げた。
「すごい! たった一人で格上を完璧に封じこんでる――!」
状態異常に苦しみながら、快癒する術のないアークバイソンが、がむしゃらに攻撃してくる。
HPが尽きかけているモーションだ。
俺もSPがなくなり、通常攻撃しかできなくなったが、ほどなくしてアークバイソンがガクガクガクッと膝を震わせて泡を吹きながら倒れる。白目を剥くと、動かなくなり消えてなくなった。
アークバイソンを毒で殺し切った。
<潮崎湊は651の経験値を得た>
<レベルが3上がった>
<スキル[強奪]の熟練度がB+になった>
<スキル[火遊び]の熟練度がD+になった>
<スキル[盗賊の審美眼]を覚えた>
<称号[毒使い]を得た>
<アークバイソンから[天空城への招待状]と[アークバイソンの大毛皮]と三万リンを得た>
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潮崎湊
職業:盗賊
LV:15
HP:51/51
SP:0/30
攻撃:16+15
防御:10
魔攻:7
魔御:7
素早さ:26+4+3
称号:豪胆な盗賊 執念の炎 蜃気楼 毒使い
スキル:強奪(B+)騙す(B)火遊び(D+)盗賊の審美眼(E-)
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盗賊の審美眼
盗む成功率をわずかに上げる。盗む成功時、アイテムを選択できる
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毒使い
毒の発生率をわずかに上げる
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