第7話レストポイント


 糸で移動しながら、討伐対象の人面グモを撃破していく。


 レベルは9まで上がり、【強奪】の熟練度はD、【騙す】はC+となった。


 次レベルが上がれば戦闘をかなり楽にするスキルを覚える。一直線に最奥を目指すとあと一五分ほどで到達するけど、スキルの都合上、回り道することにした。


 その途中、また人面グモ(LV10)が登場する。


「こいつを倒せばクエストの討伐数は達成です。やりましょう」

「うん!」


 青ちゃんは人面グモを見ても騒ぐことはなくなり(でも顔は嫌そうだった)、淡々とスキルを使い、俺の攻撃と盗みを援護してくれた。


【≪不滅≫の粘糸】で変幻自在の動きができるようになり、俺は敵を簡単に攪乱できるようになっていた。


「とどめ!」


 最後の斬撃を与えると、悲鳴を上げて人面グモは消え去った。


<潮崎湊は80の経験値を得た>

<レベルが1上がった>

<人面グモからと一三〇〇リンを得た>

<スキル[火遊び]を覚えた>


――――――――――

潮崎湊

職業:盗賊

LV:10

HP:25/25

SP:2/15

攻撃:10+3

防御:6

魔攻:4

魔御:4

素早さ:16+1+3

称号:臆さぬ盗賊

スキル:強奪(D)騙す(C+)火遊び(E-)

――――――――――


 ステータスの基本能力は全体的に低い。伸び率も大したことがない。まだHPが二五しかないのも驚きだ。同レベルの魔物でも最低四〇はあるのに。

 本当に縛りプレイのための職業って感じがする。


――――――――――

火遊び

物理攻撃を一度だけ火炎属性攻撃に変える

ごくわずかな確率で異常状態【やけど】を敵に負わせる

――――――――――


【火遊び】があれば戦闘が楽になる。

【呪術使い】の支援は必須だけど。


「湊くん、ごめん。SPがなくなっちゃった。引き返す?」

「この先にレストポイントがあるんです。そこで休むとHPやSPが全快します」

「そんなのあるんだ!」

「最奥のボスに挑むための休憩所ですね」

「じゃ行こう」

「はい」


 この洞窟のRP(レストポイント)ってたしかアレだったような……。

 近づいていくにつれて、もわっと湿気と熱気が漂ってくるのがわかる。

 目的地に到着すると、そこには温泉の露天風呂があった。


「すごーい! 温泉だぁ!」

「ゲームだとパーティ全員でちゃっと入ってすぐ出られるんだけど――」


 ゲームの世界でもリアルな部分はリアルにできているから、そんなふうにはならないよな。


「先生が先に入ってください。俺見張りしてるんで」

「う、うん。…………覗かないでね?」


 胸元を腕で隠しながら青ちゃんは半目で釘を刺してくる。


「見ないですって」

「ならよし」


 俺は来た道を少し戻って敵がこないか見張りする。


 静かなせいで、服を脱ぐ衣擦れが聞こえてくる。

 しゅるしゅる、ぱさ。

 ちゃぷん、と水音が聞こえる。中に入ったらしい。

 うぅん、とか、んん、とか、あぁ、とか吐息をこぼしている青ちゃん。

 音だけのほうが想像を掻き立てられてよりエロく感じる……。


「うう~ん、気持ちいいっ」

「良かったです」

「敵、来そうにない?」

「はい」

「…………じゃ、湊くんも、一緒に入っちゃう……?」

「覗くなって言ったのに」

「お湯が濁ってて、浸かってると見えないからいいの」


 そういう問題か?


「他の人が来ちゃったら、待たせることになるし……一緒に入ったほうがいいかなって」


 まあそこまで言うなら。

 青ちゃんが言うように、他人が来ると待たせることになるか、混浴することになる。だったら今青ちゃんとの混浴を選ぶ。


「じゃあ、お邪魔します」


 湯舟のほうを見ると、髪を結いあげてまとめている青ちゃんがいた。ポカポカらしく、頬が火照っている。胸元から下はお湯が濁っていて見えない。けど、おっぱいの上の輪郭がはっきりとわかる。

 本人はそれに気づいてないっぽい。

 ……俺からすれば十分見えてるって。エロいって。


 青ちゃんに目をつぶってもらい、俺も湯舟に入る。

 疲れがお湯の中に溶けだしていくみたいで、すごく気持ちい。


「こんなところに温泉って湧くんだね」

「そのへんはゲームなので」

「私のステータス、見てもらっていい?」


 青ちゃんは湯舟に浸かりながら移動し、俺の隣にやってくる。

 その柔肌は上気していて、うっすらと赤みを帯びていた。

 喉を伝う水滴が綺麗な鎖骨に流れ落ちていく。首元にはひと房髪が垂れており、普段まったく見えないうなじが覗いてる。


「湊くん?」

「うわぁあ!? な、なんですか」

「ステータス。見て」

「そっ、そうでしたね」

「エッチなこと、考えてたでしょ?」


 考えるなってほうが無理だろ。


「考えてないですよ。――で、ええっと……」


 ステータスを見ながら青ちゃんの質問に答えていく。やっぱりこっちも縛りプレイ専用と言えるほど基本ステータスは低い。


「さっき覚えた新スキル、役に立つかな?」

「立ちます」


 序盤の【呪術使い】は、五人以上パーティを組むなら一人入れてもいいくらいの立ち位置なので、それなりに使えるスキルを覚える。

 まあ、二人パーティで相方を選べと言われたら、選ぶ人は絶対にいない職業だけど。


「……俺の見立てでは、アラクネを倒せます」

「本当に? かなり強敵だって。目的の物を盗んだら逃げるんじゃないの?」

「一般的な前衛後衛のコンビで俺たちと同レベルなら、絶対に立ち向かわない相手ですが【≪不滅≫の粘糸】がありますし、変則的な戦い方をする俺たちなら、可能です」

「……わかった。判断は湊くんに任せる」


 そのあとは、今日の夕飯は何を食べるかなど、どうでもいい話をお風呂でして、息抜きを終えた俺たちはRPをあとにした。

 アラクネがいる広間まではすぐだった。

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