第20話 ウェンズデー

―――8月23日 10:30 曇り 気温37度


TV騒動から1夜明けた今日、僕は朝ごはんも食べず寝こけていた。スマホのバイブ音で起こされる。

「…はい」

「私だけど」

リカの声だ。

「どうしたの?」

「今日発売のウェンズデー見た?」

ウェンズデー?ああ、あのスクープ雑誌か。

「知らない。何かあったの?」

「私達の事、スクープされたみたいなの。外に出ない方がいいよ」

「まさか…!?」

昨日のフラッシュがたかれた行為はやはりこれだったか。気を抜いていた。

「ちょっと切るよ」

僕は電話を切り、玄関までドタドタと移動すると、大勢の取材陣が、

「聡さんですよね、一言お願いします!」

「一言お願いします!」

と、ドッと押し寄せてきたので、慌てて玄関を閉じる。

「あんた、どうなってんねんこれ!」

母親の怒号も飛ぶ。大変な事になった。すでに特定されている。どうしても雑誌が欲しかったが、これでは買いにもいけなかった。

「しばらく辛抱してて!」

母親にはそう言うしかなかった。2階に一旦戻り、ネットで情報を調べてみると、やはりすでに情報が光速に回っていた。

「残念」

「誰だよこいつ」

「許せねえよ」

罵詈雑言がネットをうねっていた。知恵熱が出始める。冷静になる為、1階で食事を摂る事にした。取材陣の掛け声を聞きながら、かぶの漬物を食べる。なかなか冷静にはなれずにいた。食事をすませた僕は外にも出れず、ずっと麦茶を飲みながら体を冷やし、ネットで情報を眺めるしかなかった。


―――8月23日 20:30 曇り 気温36度


さすがに夜になると取材陣も引き上げていったので、ようやく僕は外に出れるようになったので、自転車でコンビニまで走らせた。理由はもちろんウェンズデーを買いに行く為だ。コンビニに着き、書籍コーナーにそれはあった。スクープを見ると、

『新人シンガーリカ、年の差愛』『リカのおねショタ癖』

キスしている写真と、手をつないでいる写真が差し込まれている。これで急上昇したリカのファンはダダ下がりだろう。僕のせいか。僕のせいなんだろうか。とりあえず本と軽めの食事を購入した僕は、急いで自宅まで再び自転車で帰った。

帰るとリカから着信が来ていた。僕はコールバックする。

「もしもし、リカ平気?」

「…平気平気。それより明日ある花火大会、一緒に行けるよね」

「…別にいいけど、大丈夫なの?」

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