第19話 生TV出演
―――8月22日 11:10 快晴 気温38度
昨日はアニメを思いのほか長く見ていたらしく、今日は起きるのが遅くなってしまった。でも今日は夜からリカの生TV出演があるのだった。そう思うと起き抜けにだんだんと興奮してくる。しかしまだ外出するには早い。僕は着替えを済ませると、1階に降りて遅めの朝食をもそもそと食べた。麦茶を一気飲みした僕は再び2階に上がった。
ネットでリカが出演するTV番組を調べてみた。結構派手な演出が売りのメジャーな番組だ。もちろん全国放送で、これでリカの知名度は盤石なものになるだろうと思った。そう思うとウトウトしてきた。食事を摂ったせいだろうか。僕は再び布団に横になった。
―――8月22日 15:50 快晴 気温39度
ハッと目覚めるともうすぐ16時になろうとしていた。うっかり2度寝をしてしまったようだ。間に合うだろうか。急に焦って来た。TV局までは結構ここから距離がある。早速青い帽子を被り、お小遣いを数千円入れて勢いよく外に出た。
16時でも外はかなり暑かった。すぐ額に汗が伝う。自販機で緑茶を買って飲みながら駅に向かう。今回は前回にも増して乗り換えが多いので普通に困る。間に合うかどうか焦りながらの乗車だったが、電車に乗ってる間は焦ってもしょうがない。大人しく緑茶を飲むしかなかった。
―――8月22日 18:40 快晴 気温36度
何とかTV局の前まで辿り着いた。が、許可はちゃんと取れているのだろうかという不安がどうしても脳内をよぎる。つまみ出されたらたまらない。でもここまで来てしまったものはしょうがない。グイグイと先へ先へと進んで行くことにした。案内を通りスタジオ裏まで入って行く。不思議と声はかけられなかった。いくつかあるスタジオの内、音楽番組のスタジオを発見し中に入ると…。
リカがスタジオ裏でスタンバっているではないか。何というか今回もカゲキな衣装である。
リカも僕の存在に気付き、手を振ってくれた。しかし出番だったらしくリカはすぐステージの方に視線を戻した。
リカが登壇する。キャーという歓声が聞こえる。僕は舞台袖まで近寄る。
「リカです!今日は初めてのTVで緊張してますが、よろしくおねがいしますっ!」
そう言うと彼女はギターをかき鳴らした。再び歓声がこだまする。
彼女の歌声が複数のカメラを捕らえ、全国に発信されている。そう思うだけでノリに乗れる。演奏が終わり、リカはステージを降りた。リカは僕に駆け込んできて、また僕にキスをしてきた。
その時である。フラッシュをたかれたような光に包まれた気がして、ハッと周辺を見渡した。しかし怪しい人物はいないように思えた。リカも気にしてないようだったので、僕も気にしない事にした。
「さとるんのおかげで、ステージ上手くいったよ~良かった~」
「良かった良かった」
「まだ最後に出番あるから、待っててね」
そう言ってリカは舞台袖に戻って行った。小悪魔感がより増してる気がするのは、モチベーションのボルテージが常に伸びてきているからか。
最後の出番も終わり、僕とリカの2人は仲良く手をつないで帰ったのだが、TV局の出口でまたフラッシュをたかれたような形跡が見られた。今度は気のせいじゃない。周辺を回ったが、やはり怪しい人物はいなかった。何なんだろう。不安でたまらない。リカは、
「どしたの?」
と不思議そうに言ってきたので、
「何でもない」
とだけ言ってその場を去った。空に浮かぶ満月が、不安をより一層際立させていた。
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