第18話 休息と多忙2

―――8月21日 6:10 快晴 気温36度


リカの唇が僕の唇に迫って来る。

そこで僕はハッと目を覚ました。どうやら夢を見ていたようだ。冷や汗をかいていて涼しいくらいだ。でも現実に昨日リカと僕はキスをしてしまった。もう戻れない感覚が背筋を伝う。そのせいで今日は妙に早起きをしてしまった。どうしたものか…考えあぐねていると、一つの答えが浮かんできた!

ラジオ体操に行って来よう。そうすればある意味で『無』になれる。これは良い考えだ。そう思うといてもたってもいられず僕は青い帽子を被り、布団もそのままに外に出た。


―――8月21日 6:40 快晴 気温37度


実家から30分歩いた所にある神社内で、夏休み中にラジオ体操は行われていた。慌てて参加すると、スタッフの人にシートを渡された。参加するごとにスタンプを押してくれるシートだけど、毎日来るつもりは無かったので後ろのポケットに無理矢理詰め込んだ。

「のびのびと、背伸びの運動から―――」

僕は無心に体操をした。


―――8月21日 7:30 快晴 気温38度


体操が終わり、気分もリフレッシュできた僕は、今日は何をしようかと自販機で麦茶を飲んでいると、ケータイがかかってきた。リカからだ!

「もしもし」

「チュ~」

「茶化さないでよ!」

「ふふ、生TVに出る事になったよ!明日!」

「えっ」

「ミュージック番組なんだけど、スタジオに来てくれない?」

「それはいいけど…ちょっとびっくりだよ」

「波に乘らないとね♪じゃあまたね~」

驚いた。龍が天に昇るがごとくリカの人気はあがっていた。恋人の僕としては嬉しい限りなのだけれども、一抹の不安もよぎって来る。それは表現しようのない不安だった。

それからの僕はハンバーガーショップに行ってみたり、トレカショップをのぞいてみたり、家に帰ってからアニメをぼーっと眺めたりしながら明日のTVスタジオ入りを楽しみにしていた。

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