第16話 休息と多忙
―――8月20日 7:40 快晴 気温38度
野外フェスの興奮も冷めやらぬ内に起床した。夢でもフェスの夢を見た気がする。とにかく頭を冷やすために1階にヨタヨタと降りて、冷蔵庫から麦茶を出し、ゆっくりと飲んだ。今日はリカと出会う約束は取り付けていない。打ち合わせやら契約やらがあるかららしかった。今日もまたいつもの平穏な日々になりそうだ。
母親が奥からやってきて、
「朝ご飯食べ!」
といつもの口調でどやされたので、さもしい朝食をとる。食事の最後にまた麦茶を飲んで2階に戻った。
少し気持ちが落ち着いたし、さて、今日は何をしようか。とりあえずまったりとトレカの整理をしていると、ケータイが鳴った。リカからだ!
「もしもし?」
「ちゃーんと早起きしてるかな?偉い偉い」
いつものリカがそこにはいた。
「CDの件だけどね、今は配信の時代だからそっちに力をいれるらしくて、CDは最小ロットで出すみたい」
「まあ今はネットの時代だからね。小学生の僕でもネットしてるし」
「でもCDが出たら買ってほしいな!」
「もちろん買うよ、ファンだもの」
「…ファン…なの?」
「え?」
「いや何でもない。じゃまたねー」
リカは意味深な言葉で閉めた。何だったんだろう。
とりあえず再びトレカの整理をしていると、またケータイが鳴った。今度は誰だ?
「かき氷!かき氷!!」
親友の登からだ。また例のかき氷屋への誘いだろう。もちろん承諾し、財布に数千円入れ、青い帽子を被って外に出た。
―――8月20日 8:20 快晴 気温38度
今日も強い日射光を浴びて、肌が刺すように痛い。でもかき氷までの我慢なのだ。自販機の誘惑も受けながらもなんとかかき氷屋につくと、もうみんなはすでに集まっていた。
「遅いぞ聡~!」
「ごめんごめん、さつまいもシロップで!」
この間食べて、底抜けに美味かったヤツだ。今回もべらぼうに美味い。登が僕に吹っ掛けて来る。
「聡~ここ数日何してたのかってみんなで話題にしてたんだぜ?何してんだよ」
「まさか恋人でもできたんじゃないよな?」
友達の1人が僕を茶化した。ドキっとするが表情には億尾にも出さなかった。
「…トレカとかしてるよ」
呟くように言った。かき氷はほとんど食べつくしている。
「トレカか!いいじゃんこれからやろうぜ、持ってきてるんだろ?」
「聡は強いからなぁ~」
そう言えば、整理したトレカをポケットに持ってきていたのだった。
―――8月20日 9:00 快晴 気温39度
僕らはトレカショップにやってきた。途中お腹を壊した友達がいてその子は離脱した。冷たいものを食べたからだろう。
「それっ」
バトルデッキは今日も盛況だった。幸い一つ空いてるデッキがあったので、交代でプレイすることにした。
「セイレーン!ダメージ一人に8!」
「僕のターン!ダムドドラゴン!全キャラにダメージ30!」
「うわー!またやられた」
「持ってるカードが強すぎるんだよ」
今日も僕は負けることなく、友達のカードを吸収していった。と同時に時間もあっという間に吸収していったのであった。
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