第14話 野外フェス2

―――8月17日 19:10 快晴 気温38度


僕はリカからの電話に興奮していた。野外フェスの参加がOKになったと言うのだ。

「いざOKになったんなら、全力で頑張ってよね」

「頑張る頑張る!120%出すよ!だからさとるんも見に来て欲しいんだ」

「行くさ!もちろん」

フェスに参加する旨を伝えて電話を切った。これで彼女の知名度は格段に上がるだろう。嬉しさと寂しさの両方が入り混じった、何とも言えない気持ちが心の真ん中をよぎった。でもいいさ、元々年齢差もあるし、僕になんかもったいない美貌も持ち合わせた彼女なんだ。今までがおかしかっただけさ。でもフェスへの誘いを受けている。

僕は興奮して眠れなかったので、麦茶を飲みながらいつまでも野外フェスの動画を見ていた。


―――8月18日 7:30 曇り 気温36度


今日も特に予定は無かったが早起きをしてしまった。昨日は興奮していたが、いつしか寝ていたようだった。快眠だ。しばらくボーっとしていたが、ずっと動かないでいても仕方が無いので動いた。1階に降りると、

「朝ごはん食べ!」

と母親に言われたので、麦茶で流し込みながら何とかさもしい朝食を食べ、すぐに2階へ戻った。戻ったはいいが、今日は何しようか悩む。リカはバンドの練習日だ。散々悩んだあげく、せっかくのバックステージパスもあることだし、ライブハウスへ行くことにした。財布には数千円入っている。僕は青い帽子を被り外に出た。

今日は曇っている。汗をかくこともなくライブハウスに到着した。躊躇なく後ろに回る。と、ドアから一人の男性が現れた。

「君は何の用でここにきているんだ?」

「バックステージパス持ってます」

男性は訝し気にパスを眺めると、

「君みたいな子がパスを持ってるなんておかしいな。立ち入り禁止だ」

そう言って追い返されてしまった。すっかり醒めてしまった僕はライブハウスに入るのを諦めた。


―――8月18日 9:10 曇り 気温37度


そうは言ってもムシャクシャしていた僕は、久々にトレカショップへ向かった。夏休み中なのでバトル台が盛況だ。僕はデッキが組める程度のトレカを買い、バトル台に臨んだ。幸い強いカードが出たので、連勝することができた。勝つと相手のカードを1枚もらえる。僕のデッキはたちまち強い布陣になった。久々のバトルに興奮したので、少し頭を冷やそうと外に出た。自販機でジュースを買って飲む。

充分満足した僕はトレカショップを後にし、自宅へと帰ったのだった。


―――8月18日 10:20 快晴 気温38度


外は晴れて来た。家に戻ると母親が、

「そうめん食べ!」

と言ってきた。

「まだ食べるの早いよ…」

「いいから食べ!」

そうめんを食べながら思った。ここ最近までは毎日隣にリカがいた。だから彼女のいない日は何と虚しく寂しいものだろうと思った。

そうめんを食べている途中、ケータイが鳴った。リカからだ。

「リカ?」

「寂しくしてないかな?」

「練習は順調?」

「万全よ、昨日も練習したし。それよりさとるんと会えなくて寂しいよ…」

リカのションボリ顔が目に浮かぶ。

「僕だって同じさ。でも今日は羽根を伸ばすよ!」

「明日に備えてゆっくりしててね!じゃあ」

そう言うと電話は切れた。リカの気持ちは変わってないみたいだ。嬉しい気持ちで2階へ向かうと、またネットで野外フェスの動画を見てテンションを上げていた。と、またケータイに着信が届く。友人の孝也たかやからだ。

「久しぶりー。今からみんなでかき氷屋に行くんだけど聡も行かね?」

ちょうど良いタイミングで電話が来た。いの一番でOKの返事をする。


―――8月18日 12:40 快晴 気温40度


うだるような暑さだが、かき氷を食べると思えば我慢できるものだった。待ち合わせ場所で孝也らと合流する。かき氷のメニューを見ていると、色んな味がある。僕はさつまいもシロップにした。

「最近何してんだよ」

との孝也の問いに、

「…ネットとかトレカとかかな」

とだけ答えておいた。彼女(?)が出来たとは言えない。もっと遊ぼうぜ、という孝也のはげまし(?)にも、うまく答えられないでいた。

さつまいもシロップのかき氷は最高に美味しく、久々に生き返った気持ちになった。他のメンツとも談笑し、とてもリフレッシュできたのであった。


―――8月18日 14:00 快晴 気温39度


自宅に帰宅した僕は、2階の自室に戻り何をしようかと思案していた。今日は充分休息できた気もするし、明日の野外フェスの興奮を抑える為に観てないアニメの一気観をした。長いアニメを見たせいか気もうつろになり、夕飯だけ食べてすぐに寝てしまった。

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