第13話 野外フェス1
―――8月17日 11:40 快晴 気温41度
相変わらず外の光が眩しい。編集部を抜け出した僕ら2人は、近くにあるファミレスで涼んでいた。頼んだのはもちろんパフェだ。
「ライブハウスでなんか、もうやってられないわ」
パフェを待ちながら、リカは愚痴を吐いた。もううんざりといった表情だ。僕は心中察したかのように言った。
「わかるよ。狭いしねあそこ」
「もっとでっかいところでやらなきゃいけないわけよ、そこで出た話が野外フェス…」
と、言いかけてパフェが来た。パフェを置くまで2人は黙る。早速2人はパフェに食らいついた。僕はパフェを食べながら言った。
「野外フェスの件は前にも言ってたよね」
「そうなの、でかい所でやれば知名度も一気に上がるってわけ」
リカはパフェを頬張りながら続けた。
「それでね、明後日に野外フェスがあるんだけど」
「明後日!?」
驚愕してしまった。1か月後か2か月後くらいかと思っていた。
「編集部から聞いたんだけど、1つキャンセルが出たらしいの。そこに滑り込めば参加できるかもって話」
「入れたとしても、練習は1日しかないよ」
「完璧だから大丈夫!それに1曲だけだし…」
リカがパフェをすくうスプーンの動きが止まった。
「念のため今日の夕方から練習はするんだけどね。だからさとるんの最寄り駅まで行ったら一旦お別れね」
「そのほうがいいよ。応援してる」
パフェはあっという間に無くなっていく。リカにパフェ代を奢ってもらい、僕ら2人はファミレスを後にした。
都心なので駅まで少し歩く。太陽光が容赦なく2人を攻撃してくる。じんわり汗をかいて来た時にちょうど駅に着いた。
電車の中で男性にリカの事をジロジロ見る人が何人かいたが仕方が無い事だった。リカが訊ねる。
「さとるんは家では何してるの?」
「うん?特別な事はしてないけどネット見たりとかかな」
「ふーんネットねぇ」
リカはにやにやしているが意味は分からなかった。
最寄り駅に到着すると、
「じゃあまた連絡するから!」
と、言ってリカは駆けていった。僕は徒歩で家路に着く。太陽に反抗するように影を探しながら歩いてゆく。
リカは急速に出世していっている。その分、僕から離れて行ってしまっているようで寂しかった。そんな事を考えながら家へと帰って行く。
帰ると母が一言、
「ごはん食べ!」
「早いんとちゃうん?」
「今日は早く食べ!」
母に言われるともう、そうするしかない家のルールがある。仕方なく食卓に着きさもしい夕食を食べたが、パフェを食べたせいかあまり食欲がない。結局ご飯は少し残し、ゆっくり2階へ上がっていく。母親が掃除をした形跡がある。いいって言ってるのに。
やることもないので、ネットで『野外フェス』を検索して調べてみる。動画がいくつかある。凄い広さと熱気だ。さすがにリカがやる場所はここまでの規模ではないだろうが、ライブハウスとは格が違う何かをすぐに感じた。と、ケータイが鳴る。
「はい聡ですけど」
「OK出た!」
「リカ?」
「OK出た!!」
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