第90話※

「サラ。起きて」

「うぅん…ふわぁ…おつかれさまぁ…おやすみぃ…」

「こら」


 そんな会話が隣から聞こえてきた。お姉ちゃんとサラさんって、仲良いなぁ…妹として、ちょっと嫉妬してしまう。


「起きるからつねらないで…」

「起きてから言いなさい」


 どうやら頬を抓られて起こされたらしい。意外と起こし方が荒い…


 誰かが馬車から出て、その代わりに人が入ってくる気配がした。お姉ちゃんだろう。


「…起きてるの?」


 ……なんでバレるんだろう。目閉じてるのに。


「もしかして、起こしちゃった?」

「…大丈夫。ずっと起きてたから」

「……寝れない?」


 隣にお姉ちゃんが寝転がるのを感じて、目を開ける。


「外で寝るのは初めて?」

「…うん」


 お姉ちゃんは以前に野営する機会があったということをことがあったから、落ち着いているんだろう。


「まぁ仕方ないかなぁ……ねぇ、リーフ?」

「ん?なぁに?」

「…あまり、探らないでね」

「…っ!?」


 気付かれてた…?!


「…あなたがわたしを心配してくれてるってことは、分かってるよ。でもね?わたしだって知られたくないこともあるの。それは、分かってくれる?」

「……うん」


 お姉ちゃんがわたしに…ううん。わたしに何かを隠しているということには気付いていた。だから色んな方面から探っていたのだけれど……それすらも、気付かれてたなんて……。


「…ごめんね。こんなお姉ちゃんで」

「そんなことっ!?」


 思わず大声をあげそうになったけれど、お姉ちゃんから口を塞がれた。


「…今はまだ。けれど、いつか必ず、話すから」

「…分かった」


 お姉ちゃんがこう言ったら、必ず話してくれると信じている。だから、わたしはもう探らないことに決めた。


「……寝れそうにないから、サラさんと一緒に見張りするね」

「…そう。分かってるだろうけど、気を付けてね」

「うん」


 イルミーナさんとヴィクターさんを起こさないよう、馬車から出る。すると、ナターシャさんがわたしに気付いた。


「あら、起きたの?」

「寝れなくて…」

「そう。じゃあ2人が見張るなら、わたしは少し寝ようかしら」

「そうした方がいいと思います」


 そうじゃないと、もし何かあった時に動きが鈍ったりで、ナターシャさんまで危険が及ぶかもしれないから。


「じゃあおやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 ナターシャさんが馬車へと入り、わたしはサラさんの隣に腰を下ろした。


「まだ早いわよ?」

「寝れないので」

「そう」


 先程の会話は小声だったので、聞こえなかったらしい。


「…じゃあ少し、話をしましょ?」

「いいですよ。何を話しますか?」

「そうねぇ……」


 サラさんが顎に手を当て、考える仕草をする。


「…うん。じゃあ、リーフィアがなんでクーをあそこまで好きなのか、聞きたいわ」

「そこまで気になることですか?」

「聞きたいのよ。だって思うところはあるのでしょう?」

「……そうですね」


 わたしはサラさんに聞かせるようで…自分にも聞かせるように話し始めた。




 

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