学園 高等部一年 始
第6話
時が経ち、クーリアは15歳になっていた。
それでも、彼女の生活は変わらない。
いつものように起きて、いつものようにパン屋を手伝う。
ただひとつ。変わったことがあると言えば…
「ほれほれ。もう学園にいく時間じゃろう」
そう。学園に通うようになったことだ。
クーリアが今住んでいるのは、コルメリヤ王国の王都で、コルメリヤ王国には、法により決められたことがあった。それが、学園に通うことだ。
初等部、中等部、高等部に分かれており、それぞれの開始年齢が7歳、12歳、15歳となっている。
今クーリアは15歳で、高等部1年だ。
「はーい」
そう言ってクーリアは奥へと引っ込む。そこで朝食を食べつつ、制服に着替えるのだ。
「今日も頑張ってきなさい」
そう言ってクーリアに微笑んだのは、クーリアの母。フィーリヤだ。
今ではこうして毎日朝食を作ってくれるようになった。というのも、朝早くから食堂で働かなくなったからだ。
その理由が…
「あ、そうそう。今日は食事は一緒に食べるから、早く帰ってきてね」
「うん。分かってる」
一緒に食べる。それはフィーリヤと…新しい父親と一緒に食べるということだ。
あれからフィーリヤは再婚した。そのためフィーリヤは仕事を辞めた。お金はあるから無理に家族との時間を潰す必要はないと言われたらしい。
再婚相手は…なんの因縁か、前の父親と同じ貴族階級、伯爵家の人だった。だが、正反対とも言えるほどとてもダンディーな男の人で、2人にとても優しい……のだが、少々溺愛し過ぎるのが玉に瑕な人だ。
貴族に対してあまりいい感情は持っていないクーリアではあるが、そんな気持ちも配慮して夜会などには出さないでくれている。
それに伯爵家であるが故にでかい屋敷に住んでいるが、祖父母が大好きで、こぢんまりとしたところが好きなクーリアはそちらには住んでいない。それも理解してくれている。だが、週に1度ほどはその屋敷を訪れ、食事を一緒に食べることになっており、それくらいならとクーリアも了承したのである。
「じゃあ行ってきます」
朝食を食べ終え、祖父母と母にそう告げてクーリアはパン屋を後にした。
クーリアが通う学園は、コルメリヤ魔法学園と呼ばれる、王都でも随一の学園だ。
何故クーリアがこんなところに入れたのかと言うと…少々やりすぎたからである。
というのも、学園に行くのは義務。しかし、高等部からは学費がかかってしまう。それは母の負担になってしまうと考えたクーリアは、学費が免除になる推薦を貰うことにした……のだが、そこでとんでもない異常っぷりを発揮し、コルメリア魔法学園の推薦を見事もぎ取ったのだ。しかし、そのことである教師から難癖を付けられることになってしまった。
その結果、学園にあるA~Gまでのクラスの内、クーリアはもっとも低いGクラスに編入されてしまったのだ。
……もっとも、そんなことクーリアは気にもしていないのだが。
その気にしていない1つ目の理由が…
「クー!おはよう!」
後ろから声をかけてきた女の子であった。
赤い髪に瞳の彼女はサラ・ドミニク。クーリアの初等部からの友人だ。
クーリアはその無表情から友達と呼べる存在が中々出来ないでいた。そんなときに出会ったのが、サラだった。無表情で何を考えているか分からないクーリアにでも、気にせず毎日しつこいくらいに話しかけてきたのだ。その結果、クーリアも心を次第に開くようになっていった。
以来、サラとクーリアは友達になった。そのサラがGクラスに編入されるとあって、クーリアもGクラスになることをなんの文句も言わず了承したのだ。
……寧ろ、教師たちを説得するほうが大変であったのは余談である。
「おはよう。相変わらず元気だね」
そんな会話を交し、2人は揃って学園へと入っていった。
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