慚愧! 未亡人、華麗なる艶舞!(6)
※
――――美和の証言によって次なるロボットの襲来が予想され、自治体は付近住民の避難に踏み切った。
さすがは災害大国ニッポン、積み重ねた経験値の成果。柔軟で素早い対応だ。
また行政にも、先に述べたテロ事件の教訓を忘れた者はいなかった。
ことはすでに高恥研の手を離れた……と思われていたのだが。
美和および
それは、【敵】ロボットに人間、それも邦人が乗っている可能性だ。
犯罪者であっても、人権は保障されるべきであろう。ましてやその罪は確定しておらず、裁判にかけるならじゅうぶんな捜査を経なければならない。
しかも、相手は巨大ロボット。不審船とはわけがちがう。
近隣国による侵犯かどうか、正体を見極めた上で慎重に対応したい。
世論を納得させるためだけではない。政府としても強い関心があるのだ。
なにしろ巨大ロボットなのだから。
砲撃による破壊は、貴重な証拠品や証言を永遠に失することにつながりかねない。かといって、巨大ロボットを
だが【ゴダイヴァ】なら、最低限の損害で相手を無力化できるだろう。
過去三例の実績もある。
もちろん、搭乗する民間人二名を危険にさらすことになる。
しかし当人たちはそれを承知で、参加を希望した――――。
※
――――かくして、
美和はもともと、自分たちだけの手で夫を救出できるとは考えていなかった。
これほどの事件であれば、国は動かざるを得ない。
そのためには証拠と情報が必要だった。
拡散されることさえ、事実を闇に葬られないための保険だった。
そこまで見越して、高恥研を設立、運用してきたのだ。
とはいえ、以前のようにフリーダムとはいかない。今回は海保・陸自合同部隊の指揮下に入るし、取り調べはあくまでも一時中断なので警察の監視もつく。
コントロールルームは作戦本部の司令室となり、高恥研には人があふれ返った。
野戦服の人波に身長一八〇センチの黒髪ロングストレートを見つけて、
「
取り調べの間はことばを
ひさしぶりに会う
少し、やせたようだった。
以前のような張りつめた雰囲気はなかったが、どこか疲れているように見えた。
「……大丈夫ですか?」
心配する
あわただしい
「目標を【ジェイソン子】と命名します。いいですね?」
指揮権もないのに、こんな状況でもマイペースの永井である。
最後の【敵】も、やはり女性型。
顔は『13日の金曜日』シリーズでおなじみの、ホッケーマスクを連想させる。
身長は【ゴダイヴァ】と同じだが、体つきはひと回り大きい。【シャム子】は装甲のせいで大きく見えたが、それとはちがうゴツさ、いかつさだ。
――――【ジェイソン子】は【シャム子】同様、湾内に
配置していた監視網を、いかにしてかまんまとすり抜けられた格好だった。
海の警察である海上保安庁と、軍事行動をおこなう自衛隊との連携には、かねてから
ただ、無線でのやり取りには時折、怒声や不満そうな声色が混じって聞こえた。
もっとも、両者は厳しい統率の下に動く組織だ。あいまいなところから出た命令に従えば、指揮系統を乱すことになる。
また、プライドを持たなければ務まらない仕事でもある。
それをしなかったのは、人命優先という建前のほかに、警告はしたが強引に上陸され、やむを得ず、という
拡声器、無線、
が、【ジェイソン子】はひるむことなく前進を続ける。
美和は指揮者らしき自衛官と話して、ふたりをふり返った。
「
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