忸怩! 明かされた敵の正体!(4)

 ――――翌朝。

「あいさつにいくぞ」

 出勤早々、一拓いったく冬羽とわに連れられて四階の所長室をおとずれた。


「失礼します」

「……どうぞ」


 扉を開くと、正面の机で業ヶ崎美和ごうがさき・みわが待っていた。

 くっきりした目鼻立ちがショートのウルフカットにえる。

 冬羽とわの母親だから若くとも四〇台には乗っているはずだが、そうは見えない。いわゆる美魔女というやつだ。


「所長。お客さま対応部の新人をご紹介に上がりました」

 めずらしく、冬羽とわは少し緊張しているようす。


破風原一拓はふはら・いったくです。よろしくお願いいたします」

 一拓いったくも美和には苦手意識があった。外見や人柄にではなく、採用面接でボロボロだったのだ。別に圧迫されたわけではない。自爆である。


 美和は嫣然えんぜんとほほえみ、「面接のときに会ったわね? 業ヶ崎美和ごうがさき・みわです。よろしく」と返礼した後、

冬羽とわ? ウチは役職名禁止よ?」と、部下をやんわりたしなめた。


「申し訳ありません、お母さま」

「……よろしい」

 笑顔でうなずいたところを見ると、さっぱりした性格のようだ。





「――報告書はざっと目を通しました。

 肝心のときに留守して悪かったわね。あなたの対応はよかったと思います」

 一拓いったくの顔見せが、いつの間にか冬羽とわとのやりとりになっている。


「ありがとうございます。一点、記載しなかったことがあるのですが」

「なあに?」

「所長のお留守中に、翔也伯父さまがお見えになりました」

「役職名禁止。

 ……ほっとけばいいわ。返済はとどこおりなく進んでます。第一、あの人にしてる借金じゃないもの。

 だいたい本家だって、あんな人に大きな案件なんか任せやしないわよ」

 なかなか手きびしい。一拓いったくも苦笑いしかできなかった。


 空気がやわらいだところへ、ノックの音。

「エ、遅くなってすいません。四方据よもすえでございますが」

「どうぞ」


「失礼します」と入ってきたのは、うだつの上がらない作業服姿のおっさん。

 頭髪が薄く、エラが張って、鼻が低く、その下の溝が長い。まるで浦沢直樹が描いたサル顔の日本人キャラ。

 一拓いったくたちを見て、

「こいつぁ失礼いたしました。また出直しましょうか」と汗マークを三、四個飛ばしたが、美和に「社長、このままで結構ですよ」といわれ、

「へぇ。それでは」

 とかしこまった。





「エー、ご報告いたします。いままでにアレした二体のロボットなんですが、そのォ……、

 です。

 使ってるのも、でした。

 でございます」


 一拓いったくは思わず顔を上げた。


 ――――どういうことだろう?

【ゴダイヴァ】を設計したのは、冬羽とわの父だという。

 その同じ人物が、【敵】ロボットを造ったのか?


 そして、美和はそのことを知っていたというのか?





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