忸怩! 明かされた敵の正体!(3)
(借金かぁ~……)
手動操作の練習にも慣れ、
上司に知らされた、勤め先が借金漬けという事実。
ふつうなら、ここで退職を考えるところ。
しかし、
秘密主義の
(ま、そっちはともかく、問題は……)
動機としては正直ちょっと、いやかなり重い。
(けど聞いちゃったからには、逃げるわけにもいかない……よ、な?)
こう見えて、
それに、人間というものは目的が明確なほうが動きやすくなるものだ。それが利他、献身といった種類のものであればなおのこと。
引き出しにしまい込んだ退職願が日の目を見るとしたら、彼が職場にいられないほど恥ずかしい思いをしたときだろう。
ふと、向こうの机で永井と横山の交わす会話が、聞くともなしに耳に入ってきた。
「……そう。攻撃が雑なんだよ」
「バリエーションが少ないですね。というか、前回の【敵】はオーバーハンドしか使ってないです」
どうやらこれまでの戦闘データを分析しているらしい。
「倒れた【ゴダイヴァ】に攻撃しなかったのも気になるんだよな……。先生のメールに何かそれっぽいこと書いてた?」
「神とか
やはり、聞いてもよくわからなかった。
――――場面は変わって【ゴダイヴァ】の
「こうやってな? 回しながらー、押したらー、ほら、ミゾが出たでしょ? そこにー、ここのー、出っぱりをー、差し込むんだよ」
どうやら、
「ニポン語、ムッツカシーねー」
例によってスタンヒルはあいまいな笑顔。
日本語の問題じゃないような気もするが、困り眉は腕組みをして同意する。
「日本語むずかしいよなー。オレなんてこないだ、娘に『てにをはの使い方間違ってる』って怒られちゃったよ。こっちが宿題手伝ってやってんのにさー」
「ジンさん、
「うんうん、ゴメンなー」
ふたりしてうなずき合っているところへ、威勢のいいハスキーボイスが近づいてきた。
「トヨシ、ちょっとは仕事しろ! スタだって日本語わかんねーのにがんばってんだぞ!」
ハスキーボイスは例のピンクツインテだ。
彼女に腕をつかまれ引きずられているチャラい若造がトヨシ。
金髪で、耳のピアスが左右合わせて七つ。
作業服も会社の支給品とはちがう派手な色で、汚れていないのは腕がいいからではなく、サボってばかりいるせいだった。
「そこらじゅうに吸い殻捨てんな! 客先だぞ? てゆーかアンタ未成年でしょ?」
「わかったわかったわかった、痛い痛い痛いって」
見かねてか、困り眉が仲裁に入る。
「おーいモモ、ほどほどにしとけー」
「ジンさんも何とかいってやってくださいよー」
なだめるジンの前に
「お、定時だな。お疲れー。じゃ、お先」
立ち上がったジンに、モモが不満そうな視線を送る。
「ちょっとジンさん、あーしの作業、チェックしてくれんじゃないの? 明日までに終わんなくない?」
「今日はノー残業デーだ」
「は?」
「『ウィンウィン』のサービスデーともいう」
ふり向いたジンに困り眉の面影はない。勝負師の顔だった。
「またっスか? 奥さんに怒られますよ? こないだ八万負けたばっかりじゃないスか」
「十万までは負けじゃねぇ」
「前は『五万まで』っていってませんでしたっけ?」
「今日は勝てるんだよ。なぜってサービスデーだから」
ジンは自信たっぷり、
「
同じころ、事務所で試験勉強をしていた
「僕はそろそろ」
働いている体裁さえあればいいので、必要以上に残るつもりはない。どうせ残業もつかないし。
「そうか。私はまだすることがあるから」
「じゃ、失礼します」
と、出口へ向かったところで呼び止められた。
「明日、所長が出勤される。特に用意することはないが、そのつもりでな」
なぜか、
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