忸怩! 明かされた敵の正体!(1)
「今回も無人機……残念でしたね」
「先生、ご無事だといいんですが……」
射し込む朝日とは裏腹に、永井と横山の表情は暗い。
しかし、
「お気遣い、ありがとうございます。
ですが、私はあきらめません。戦いが続くかぎり、希望はあります」
ふり向いた
――――シャッターの下りた商店街をママチャリで走り抜けた。
いつもと変わらない道、いつもと同じ人通り。深夜の巨大ロボット騒ぎなど誰も知らない。
退職願をふところに、
(どんな顔をするだろうな……)
あの
ニヤニヤ笑いを浮かべながら、どこまでも続くフェンスの脇をこいでいたら、南京錠のかかった通用口のあたりで二人連れの男が立ち話をしていた。
(…………?)
気になったが、一本道で隠れる場所もないし、秘密の出勤ルートはここだけだ。
できるだけ素知らぬふりをしながら、防風林の木立へ乗り入れた。
灰色のシートの向こうで、
海風に吹かれ、長い黒髪が躍っていた。
「どうした。今日は休んでいいぞ?」
と眉をひそめたが、表情にも声にも、いつものトゲトゲしさはなかった。
(……なんで、こんなときだけ……)
退職願を叩きつけてやるつもりだったのに。
自転車をこいでいる間に熱が冷めたのもある。
「や、なんとなく……気になって」
ごまかしたのを、
「そうか。じゃあ、近くで見てみるか?」
と、階段へ歩き出した。
整備のため、肩や胸などの装甲が取りはずされ、昨日見たときより全体的に白い。目に見えてわかるような損傷はなかった。
顔は、やはり黒いバイザーで隠されていた。
「…………」
沈黙が気まずく、後ろめたさもあって、
積み上げた機械にシートをかぶせた山が、いくつかある。これまでに回収した残骸と思われた。
「うん。だからな」
声がして、シートの前にいる作業員が目に入った。
三〇がらみで彫りの深いワイルド系だが、困り眉のせいで目に
「道具を全部工具箱にしまっ……て、ホース巻い……て、台車に乗っけ……て。それだけでいいから。わかった? スタンヒル?」
落ち着いた口調なのに、よく通る声だ。
五メートルほど先に、
英語ふうの苗字だが肌は浅黒い。東南アジアか中東か南米か、出身があいまいだ。腰を浮かせて、立つのか座るのかもあいまいなら、表情もあいまいで、指示を理解しているようには見えない。
「あ、ちがうちがうちがう、台車は小さいほうな、小さいほう。あ、ちがうちがうちがう、工具箱はー、俺のとー、お前のとー、ふたつな? ふたぁーつ。あ、中の物出さなくていいから。しまってしまって」
もうスタンヒルのところまで行ってやれよ。そのほうが早くないですか?
なんだか不思議な光景だ。
あっけにとられる
「お世話になってまーす」と、ハスキーな女の声。
ピンク髪をツインテにして、革手袋に安全靴、ツナギの
「すませーん、いま社長いないんスよー。あ、お茶出しましょうか?」
口調はぶっきらぼうだが気遣いのできる娘らしい。
「わーりゃーしたー」
またカンカンカンと階段を上り、姿が見えなくなった――と思ったら、
「トヨシ! てめーいい加減にしろ! スマホ海に放り投げっぞゴルァ!」
誰かは知らないがトヨシ、ご愁傷さまだ。
「
――――カンカンカンと音がして、ピンク髪がまた階段を下りてきた。
「あのぉー……なんかお客さん? なんスけど……」
うさんくさげな表情だった。
それもそのはず。高恥研には営業や勧誘どころか、郵便が届いたことすらないのだから。
階段を上る
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