屈従! 第二の刺客、襲来!(5)

「……妙だな」

 コントロールルームで永井がつぶやいた。


「なぜあいつは攻撃してこないんだ?」


【フレディ子】は、倒れた【ゴダイヴァ】に視線を向けるだけで、一向に動く気配がなかった。

 まるで見守るか、立ち上がるのを待っているかのようだ。


「永井センパイ。わたしも気になっていることがあるんです」

 呼びかけを中断して、横山もコメントした。

「【敵】の攻撃、手数は多いんですけど、単調というか……」





 ――――とうとう警報音さえ鳴りやんだ。

 静かになったコクピットで、非常照明だけが点灯していた。


「…………っ」

 一拓いったくは痛みをこらえながら首を起こした。

【ゴダイヴァ】が前に倒れたため、ふたりともうつ伏せの姿勢。転落をまぬがれたのはシートベルトのおかげだ。


「大丈夫ですか?」

 首を回して冬羽とわを見た。

 髪の乱れた姿が痛々しかった。


「だいじょうぶだ」

 意識はある。口調もふだんと変わらない。

 だが、一拓いったくの顔は真っ青になった。

「部長! ケガしてるんじゃないんですか?」


「ケガ……?」

「ほら、それ、……ム、ネ……の形が、なんか変……」


 ふたつの砲弾は、容積はそのままに攻撃性を失っていた。

 というか、凸凹にゆがんでいた。これがケガならひどい重傷のはずだが……?

「痛く、ないんですか?」


 冬羽とわ怪訝けげんな顔で胸を見、おもむろにワイシャツのえりをつまんでパタパタ振った。

 すると……


 ――――ぽろん

「?」

 転がり落ちたのは、丸っこくて小さいクッションのようなベージュ物体。

 パッドである!


 だが女上司、それだけでは飽き足らないとばかり、大きく開いたえりもとへ手を突っ込んだ。


「えっ……?」

 ひとつ、またひとつ。

 当惑する一拓いったくの前へ、まるで手品のようにこぼれ出る大小のパッド。人はこんなにも多くのパッドを装着することが可能なのか。

 なでこ先生のいっていた秘密とは、このことだったのである!


 ここでちょっと落ち着いてみよう。

 これほどのパッドを収納するには、じゅうぶんな空間が必要だ。

 それは、ブラがオーバーサイズであることを意味する。

 すべてのパッド(ちなみに三×二の合計六個)がなくなったいま、そこに出現するのは――――浮きブラ!

 浮きブラ? そんなありきたりな呼び方はふさわしくない。大地を完全に離れ舞い上がった、いうなれば!

 天空の城ブラ!


♪地球ーはまーわーるー 君をーかくーしーてー


 隠すどころか、すべてさらけ出してるがな!

 地上波なら、謎の白い光か謎の黒い影の出番!


「マ、マズいですよ部長……!」

 一拓いったくの目が指の隙間から一瞬とらえた光景、それは……


 無いというわけではない、有るが決して大きくない、大きくはないが、小さいなんて卑下しなくてもいいんだよ? と、やさしい声をかけたくなる……そう、可憐。

 いたいけ、といってもいい。

 見てはいけないものを見てしまった、そんな恥ずかしいふくらみ!





 

 ――――そのとき、ゲージが輝いた!

 そこに刻まれた幾何学図形は、「G」、「O」、「D」、「I」、「V」、「A」の組み合わせなのだ!

 説明されないと誰にもわからないと思うけど!


 はがねの未亡人は、海水をしたたらせながら復活した!!





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