汗顔! 上司と部下、一夜の過ち?(4)
「二次会いく人ぉー」
店の外に出るや否や、なでこ先生がさっそく音頭を取る。永井と横山は参加する気満々だ。
「すいません、僕はもう……」
「じゃあ、
目が、
大丈夫といったのは法的な意味で、肝臓機能ではなかったようだ。だいぶペースも早かったし、もしかするとアルコールは初めてなのかも。
(えぇ~……)
正直、気が進まない。送り狼になるつもりも度胸もない。あるわけがない。
それはそれとして、いやといえる状況ではないし、送るというなら家までだろう。
「場所、わからないんですが」
「【こうちけん】でいいと思います。いつもそこに寝泊りしてますから」
「えっ……そういえば、こうちけんって何なんですか?」
あー、と横山は手を打った。
「いってませんでしたね。ハイシャイ・ラボは
わたしたちは
「なるほど……」
納得している間に、三人はさっさと二次会へ向かった。
うまく丸め込まれてしまったらしい。
高恥研までは距離があるが、
「部長、歩けますか?」
体をゆらゆらさせながらも
何しろ三〇センチ以上の身長差。
寄りかかられたら、当たるのだ。顔に。豊満な胸が。
「じゃ、いきましょう」
先に立って歩き出したが、ついてくる気配がない。
ふり返ると、立ち止まったまま無言で片手を差し出している。
(えぇ~……?)
しょうがなく、その手を取ってまた歩き始めた。
造船所前の長い一本道に、街灯はほとんどなかった。
思い出したようにヘッドライトがふたりを照らし、通り過ぎた。
たとえわずかでも、車が通るということは人目にさらされるということだ。
――――守秘義務について念を押すとき、
『フェンスの通用口は使うな。今後はこのルートで出勤しろ』――――
目印は、防風林の木立に隠れた小さな廃屋。
永井のヤリスが駐めっぱなしになっていた。その脇を通って、奥へ。
凸凹の地面を登り、木々を回り込んで下ると、舗装された急カーブに出る。車一台の幅しかない、狭い道だ。
カーブを曲がらず、枝道(車道なのになぜか車止めのアーチが設置されている)へ進んで、低いトンネルをくぐる。ここを抜ければ、造船所の敷地内だ。
トンネルの内部は足もとも見えないほど真っ暗だった。
ただふたりの足音だけが、こだまする。
スマホのライトを頼りに、中ほどまでさしかかったとき、背後で
「気になるのだろう? 私たちが何をしているのか」
「ちょ、こんなとこで
「教えてやろう」
ニヤッと笑い……天を仰いでやにわ絶叫!
「――――【敵】はカルト教団だ!!
やつらは水曜日にやってくる!!」
(え、えぇ~……)
酔ってんな?
叫んでスッキリしたのか、女上司はそのまま
(……ちっ、近い……)
近い。
女上司は酒臭い息を吐きかけ、
つい昨日、嵐の中で初めて出会ったときの、黒曜石のようなまなざしがふたたび。
「……キミは私の部下だ。逃げるなよ」
ズルリ……
直後、あえなく轟沈。
どさり。
身長一五〇センチは身長一八四センチの下敷きに。
ところが!
(えぇ~……///)
これは、あくまで事故! うれしい事故!
なのに、そろりそろりと引き抜く部下である。
なってねえ! なってねえよ!
見せてみろよ! ガッツをよ!
――――そう。
実はこのとき
続く!
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