汗顔! 上司と部下、一夜の過ち?(3)
「かんぱぁーい!」
グラスを打ち鳴らす音。
テーブルにはミミガー、もずく酢といったお通しが並んでいる。
歓迎会の会場は、バーのような沖縄料理店だった。ほかに客はなく、貸し切り状態だ。
乾杯の後、
「こちらは、
「ドクターなでこだよ~。なでこ先生☆って呼んでねぇー」
キラキラのネイルを見せびらかすようにひらひらさせたのは、
「ここ、なでこ先生おススメのお店なんですよ」
横山がいうと、褐色の女医はうなずき、
「だー、
ダーって何、ロシア人? イントネーションもどこか奇妙だが、日本語を話せる外国人ならもっとふつうにしゃべる。
「あれ? そういえば
「今年で
なんとまあ。たしかに若くは見えたが……。
みな酒好きらしく、
――――前の仕事は? 大学の専攻は? 就職の動機は?
歓迎会としては当たり障りのない話題だが、面接をやり直させられているようで落ち着かない。
質問攻めがひと段落すると、隣の永井が笑顔でいった。
「女性ばっかりの職場だから、
おや、どうもいい人っぽいぞ?
ただ気になるのは、推定年下の永井が上からくるところ。まあ職場の先輩だし多少はね?
「ほかの人には聞きにくいことでも、遠慮なく質問してくれていいから」
といわれると、そりゃあ聞きたいことはいくらでもある。
【敵】って、なに?
外国の軍隊? 軍事テロリスト組織? それともまさかの宇宙人?
そういうのと戦うなら、自衛隊じゃないの?
【ハイシャイ・ラボ】って、なに?
この人たちはなんで戦ってるの? なんで秘密なの?
なんで自分が採用されたの?
【恥力】って、なに?
恥ずかしい感情から生み出されるエネルギー?
それを
……けれど、どれもこれも突飛すぎて、どう聞けばいいのか。
結局、「部長って
「なになに?
と、なでこ先生が妙な方向から食いついてきた。
「いや、別にそういうのじゃ……」
「わかるさぁー。美人だし、いい子だからねぇー」
そうか?
「だからちがいますって」
苦笑いで否定したが、なでこ先生は訳知り顔でほのめかす。
「でも、
「……?」
「ちょっと、なでこ先生、ダメですよ」と、いつの間にか興味津々、顔を寄せていた横山がたしなめると、
「でも秘密だから内緒さーね! なでこ先生は人の秘密をバラしたりしません」
何が面白いのかケタケタ笑う。
酔ってんな……。
「まあ、上司が年下ってやりにくいと思うけど、いろいろがんばってる人だから」
と、永井がフォローを入れてうまくまとめた。
(………………)
こっそり上目遣いで見ると、
とりあえず、いまのやりとりは聞かれていないようだった。
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