多辱! 嵐の中の初出撃!(2)
(………………でっ……か……)
第一印象is身長。
小柄な
しかしこの女、優に三〇センチは上だった。さすがの
すらりとした肢体を包むパンツスーツも、後ろで束ねたストレートの長い黒髪も、風になぶられ、雨に濡れていた。
第二印象is胸。
濃灰色のジャケットと白いブラウスを不謹慎なまでに押し上げている、おそらく砲弾型と推測されるそれ、いや、それらは、金網越しとはいえほぼ眼前で、厳然と、
第三印象is目。
顔立ちは、全体に直線的ではあるものの、整っている。くっきりと黒い
しかし彼女の場合は三角に吊り上がって、
いい換えれば、
豪雨、暴風、高波、気圧、オゾンの匂い。
嵐には、人を酔わせる何かがある。
きっと、
その目は、彼女の黒曜石のような
「遅いぞ!」
長身女は金網にかかった南京錠をはずした。
なんだ、目の前じゃん。
といっても、やっぱり看板も表札も出ていない。
「ついてこい」
いわれるまま、速足の後ろ姿を追う。歩幅もちがうから、
と、なにやらぶつぶつつぶやくのが聞こえた。
「まったく……どうして私を面接に呼ばなかったんだ……」
たしかに、面接では顔を見なかった。というか、会っていたら忘れるわけがない。
察するに、彼女は
(……この人の下で働くのか……)
酔いが覚めたように、
だだっ広い敷地には、ところどころ建造物や構造物が残っていた。地面を
引き締まったお尻を小気味よく振り(誘惑とか挑発とかではなく大股で歩いているからです。パン線は心の目で見てください)、長い黒髪を強風に躍らせ、長身女は建物ともつかない巨大な壁へ向かっていく。
近寄ると、壁に見えたのは工事現場で使う灰色のシートだった。
幅は百メートルほど、高さも数十メートルはありそうだ。どうやら、道路側への目隠しらしい。
シートの向こうに踏み入って、
「うわ…………」
足もとで、地面は切り落とされたようになくなっていた。
落下防止の柵こそあるが、コンクリートの底は十数メートルも下。
何百メートルも続く絶壁をまたぐように、ガントリークレーンがそびえていた。
うち
長身女はかかとを鳴らし、鉄製の階段を降りていく。
底まで降りると、ためらいのない足どりで、海のほうへ。
そこに鎮座する、機械にしては巨大すぎる存在。
逆光でシルエットしか見えない。
「あの…………」
「いまここで、部下であるキミに、上司として最初の指示を下す」
決断的な表情。
そして、
「これから、私に恥ずかしい思いをさせてもらいたい!!」
ドッッ……パアアァァ……ンンッッ!!
そのとき、高波が轟音を立てて
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます