学祭今年はメイド喫茶(男子含)

狐照

学祭今年はメイド喫茶(男子含)

漫画だと女装したらすげぇ可愛い、とかある。

私より可愛いなんて、みたいな展開とか。

あの子可愛かったなぁ、とか。

でも現実は微妙だ。

ガチで女装をしてる人を間近に見たことがないから、全否定はしない。

けど、男子高校生が女装は残念の一言に尽きた。

ネタでしかない。

うん、ネタなんだろう。

それが狙いだったんだろう。

学祭の出し物、だから、集客を考えないとだから。

異論はなかった。

他に良いアイディアも浮かばなかったし。

それに思う所があったから。


そうして俺の想像以上に、とてつもない美女が爆誕した。

俺の彼氏である。

幼馴染への特別な想いが高校生になったら無事昇華して、成就して、お付き合いしている、大好きなひとが。

美女メイド様に変身したのである。




美女メイド様は大人気なので、出現時間が決まっている。

今は休憩中だ。

俺は美女メイド様のストレス緩和剤なので、ニコイチで行動させられている。

付き合ってるのバレてんのかっていうくらい、公式カップル扱いされてる。

冗談でも嬉しいのでデュフフ受け入れてるのがいけないんだろうか。

幼馴染も拒絶しないから、いっかなと思っているのだが。


慣れない接客にどっと疲れたご様子の幼馴染が、スマホを操作している。

膝下の黒のスカートから覗く黒いストッキングを履いた足、綺麗。


幼馴染は元が綺麗だ。

顔面国宝級と言われても、もっと言えと煽ってしまうほど綺麗。

今はウィッグのプラチナブロンドが地毛のような、メイド服を着たお人形さんみたいに見える。

怜悧な美形だから、ちょっと手を加えると人間離れしちゃうとか、まじ綺麗。


「あ?どうした?」


けど、所詮は男。

中身は男。

なんていうか幼馴染は色んな意味で男だ。

格闘技してるし、漢だし、そう雄々しい。

立ち振舞が男で、背も高いし声もめっちゃ低い。

本来、そういう男子高校生がメイド服を着ているだけの図=視覚の暴力だ。

だけど幼馴染は美形。

そして俺には、俺は惚れた弱みがあるから。

ひぇぇ、きれー、みとれるー、なにきてもかっこいー、すきー。

状態なのである。


「きれー、だから」


「…おまえの美的センスどーなってんだ?」


不快そうに眉間にシワが寄る。

そうは言われましても綺麗なもんは綺麗。

お写真NGとのことですが、撮らせてほしい。


幼馴染はメイド服をいやいや着ている。

俺も着るしみんな着るからと、何とか説得して今がある。

だから女性っぽくとかは一切してない。

していないのに大人気。

それが幼馴染には理解出来ないようだ。

見た目が美女で中身が男前だからだと、思う。

それを説明した所で幼馴染は自分の見目に興味が無いので、話は平行線。


「…ま、俺もおなじか」


俺を下から上まで見てからそんなこと言う姿も綺麗、がに股メイド、ほんと、きれー。

足を組んで幼馴染が、ニヤっと嗤うかっこいしゅき。


「おまえ、かわいーな、メイド服」


「え、それこそ眼科検診勧める。美的センスも心配…」


俺はメイド服を着てるだけのお笑い要員だ。

素の俺が、男子高校生が、メイド服を着てるだけ。

可愛いの真逆に立ち尽くしている。

なのに、


「俺はお前が常日頃かわいーから、仕方ねぇんじゃねぇか?」


色白の人外じみたイケメン幼馴染は、ど平凡な俺がかわいーらしい。

いや、彼のかわいーの頂点なのは嬉しい。

が、可愛いは嬉しくない。

にりつはいはん、最近覚えました。


「そのミニスカ、やべぇな」


さっきまで恥ずかしくなかったのに、指摘されたら急に恥ずかしくなる。

俺はすね毛生えてないし、見せても平気だったから、生足でミニスカメイド服を着ていた。

だけど視線をそんな注がれたら、ついスカートの裾を押さえてしまう。


「かわいーかよ」


それもあれな仕草だったのか。

どうしよ、見られたくない恥ずかしいそうだ近寄ればいーんだ。

急いで抱き付いた。

密着すれば見られない、安心だ。


下策、でした。


「あ、だ、ちょ」


「お前にスカートは、無防備がすぎんな」


「ら、めぇ」


「いやか?」


「っ…ぅ…」


もちろんいやなものか。

だからされるがまま。


気付いたらスカートに顔を突っ込んでたし、えっちなツーショット撮られてました。

けど、圧倒的大満足学祭になったことはいうまでもない。

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