陰キャボッチ、ダンジョン配信をする
2023年。
突如として全世界に姿を現した大量の資源並びに農業に適した肥沃な土地を大量に提供してくれるダンジョンはそれまでにあった世界を大きく変貌させた。
既に大国としての地位を確立していた国々はダンジョンによってその地位を確固たるものとし、情勢が不安定となっていた地域ではダンジョンを巡っての争いが激化していく。
そんな世界の中で時が経つこと60年。
未だに発展途上国には安定という二文字が見えぬ中で先進諸国が確固たる安定を享受する中で、持ち前の国力に多くのアニメによってダンジョンを受け入れる土壌が既に出来上がった日本はこの世界でも最も安定した大国である。
「ぶっ飛べぇ!」
そんな日本に存在するダンジョンの中でもトップクラスの難易度を誇る新宿ダンジョンの深層において。
一人の少年が手元にある超電磁砲をぶっ放し、目の前にいた何十という数の魔物を消し飛ばし、いともたやすく魔物の群れを壊滅させる。
魔物。
それはダンジョン内に巣喰らう怪物であるとともにその体内にある高純度のエネルギー体である魔石からその体の多くを様々な形でも利用できる資源の一つである。
「っとと。やっぱりこのクソでか超電磁砲の反動デカい」
決して人間が構えるような代物ではない戦艦用の超電磁砲をぶっ放した反動で腕を大きく損傷させた少年は苦笑しながらダンジョンの中で自分のすぐ傍らにあるカメラに向かって話しかける。
「それでもやっぱり威力は僕の持つ通常兵器の中でもトップクラス!それに僕たち探索者が強くなった影響で通常兵器の必要性が薄れてきたせいで開発研究が廃れてしまった影響で未だに現在、世界に存在する兵器ナンバーワンの威力かつ我が国が開発した兵器なこともあってこいつは格別なロマンがあるよね」
何も少年がとち狂ってカメラに向かって一人、話しかけているわけではない。
これはカメラを通して配信アプリで全世界で生ライブされているのだ。
まぁ、少年の配信者の数はゼロ……結局、一人で話していることには変わりないのだが。
「……増えない」
元はダンジョン内の犯罪立件の為に使われるようになった小型自動追従カメラが通信技術の発展と共にいつしかその用途を配信用へと変え、今ではダンジョンで配信を行うダンジョン配信ブームが日本で巻き起こっているのだ。
そんな中でも少年は一切の人気がないのだが。
「……んにゃ?」
誰も見ていないカメラに向かって話しかけることに虚しさを感じながらも必死に語り掛けることを辞めずにダンジョン内を歩き、手元にある現代兵器の数々を使って魔物を一蹴に帰す少年は何処からか聞こえてくる少女の声を捕えて立ち止まる。
「これは加勢に行った方が良い、かな?ちょっと様子を見に行きますね!」
少年は手元にあったクソデカい超電磁砲を自分の影の中に仕舞い、その代わりとして一つの電気銃を手に走り出す。
神崎天津。
現役高校生ながらも本来は魔物相手に有効打に成り得ないはずの現代兵器を駆使するかなり特殊な戦闘スタイルを持つ天津はこれから自分の運命を大きく変える一人の少女との出会いに身を投じることになるなど、このときはまだ知る由もなかったのである。
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