第122話 『最終回』


 荒川博士たちは、都庁の知事室に集合していた。


 『あら、あの、ルイーザ王女、オールマイティー司書さんと、普通の司書さんと、キューロボットさんがいないな?』


 ふみたいが指摘した。


 『そりゃそうだろうな。帰ったんだろ、もとの世界に。』


 と、荒川博士が言った。


 『まあ、人類は、今回、誕生以来最高の完全平和に至るチャンスをみすみす棄てたのかもしれないが、しかし、幸せは与えられるものでは、やはり、なかろう。』


 と、付け加えた。


 しかし、一度完璧な幸福感を味わった人の中には、その幸福を手放したくないと思う人たちも現れることになる。


 その人達からしたら、せっかく掴んだ幸せを奪った犯人は、都知事や荒川博士の仲間たちということになり、ひどく恨まれる原因になってしまった。やがて、それは、またまた、争いの火種になってしまうわけである。人類というものは、結局のところは、どうしようもない生き物かもしれない。ただし、それをどう見るかは、人によりけりである。


 一方で、もともと権力者であった人たちは、やれやれ、と安堵したのも事実だったのである。


 もちろん、荒川博士のように、そうした感情的な理論には無縁な人もあったわけだが。


 じょうめやふみたいは、立場上は、権力者寄りではあるが、べつに安堵したということはなかったし、まりこ先生は、ジラのような強権的なやり方は頭から大嫌いだったし、ジラに同情する気はもちろんなかった。


 まりこ先生の道は、まりこ先生にしかないのだから。


 しかし、まりこ先生の兄様は、どうやら違う見方をしていたのである。


 というのも、兄様は事実を知っていたからである。もちろん、妹には、まだ秘密を明かす気はなかったが、実は、兄様とまりこ先生は、『我々』の、わりに近い子孫だったのである。つまり、その能力や危ない力は、ジラの流れを汲んでもいたわけである。


 『まあ、とにかく、元に戻ったようですが、しばらくトラブルは心配です。やはり皆さまのご協力を求めます。何らかの形で当面都の業務に関わっていただくようにしたいのです。』


 と、都知事はどんどんと、話を決めていってしまう。


 『え、おらはまだ学生ですよ。』


 と、新山悟が尋ねた。


 『学生さんは、学校に戻りましょう。ただ、アルバイトは認めたいと思います。都の四国地方事務所もありますし。アルバイトしますか?』


 『わお! やります。』


 『わたしは、束縛されたくないから、自分の会社に帰るぞ。』


 と、荒川博士は先に答えた。


 『どうぞ。でも、ぜひ、先生には技術的ご協力をいただきたい。』


 『そいつは、まあ、条件によりますな。ま、相談には乗りますけどな。』


 ぼくは、つまり、考古学者の卵であるぼくは、やはり、しこしことした発掘調査に戻る。


 青ジソかな子たちも、フランスの大学に帰るという。


 しかし、いまだ、分かっていないことが多い。


 例えば、あの縄文人たちは、なぜ、お土産を売っていたのだろうか。だれが、買っていたのだろう。単なる貿易だったのか? もっと広い扱いだったのか? 物々交換だったのだろうか?


 じつは、都庁には、彼らがどたんばでくれたという品物が回り回って納められた。


 例の司書さんがぼくに渡してくれたのである。


 それは、まさしく、土偶であった。


 しかも、出来立ての土偶だ。


 専門家たちがどう見るかは、まだ、これからの話だが、本当のことは、ちょっと公開しにくいだろうな。

 

 ぼくのような、穴掘りからみたら、それは、たいへんなものである。


 造られた素材は古代のものだから、議論を呼ぶかもしれない。


 まあ、都知事がどう扱うか、興味深い。


 また、例の板には、なんと書いてあったのかも、まだ、解読できていない。


 さて、作者は、『続編』を書く気でいるが、はたして、寿命が残っているかどうかは、分からない。



    🙇🙇🙇🙇🙇



       おわり









 


 


 


 


 


 

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『ジラ! 異世界からの略奪』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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