第4話 『ジラ あらわる』 その4
『おいらたちは、ひたすら、はっくつするべな。』
山口さんは言ったのである。
その通りであろう。
ほかに、することはない。
ただし、テレビの情報は、つけっぱなしにした。
あまり、充電力は使いたくはないのだが、さすがに、みな、そうは行かない気がしたのである。
発掘とは、気力と体力の勝負である。
掘ってみなければ、何が出るかは判らないし、ちょっとの差で、出ないかもしれない。
運と言うこともあるのだ。
『せんせ、変なものが出た。』
バイト常連のおばさまが言ってきた。
へたな新人学者より、よほど詳しいし、しかも謙虚である。
『はい? なんでしょうか。ふうん。………いや、これは、何だろう。』
ぼくは、はたと、困惑したのだ。
それは、縦横7センチくらいの、方形の物体である。茶色というか、灰褐色というべきか。
地層からみて、1万年前辺りの山の斜面の部位から出てきた。
縄文時代の地層である。
しかし、そいつは、土器にしてはなんだか変だ。平べったいし、紋様はなかったし、容器類ではなさそうだ。石器ではない。刃になる部分はない。だいたい、すべすべである。
『なんでしょうか。セラミックじゃないみたいだな。むしろ、プラスチックみたい。縄文時代には、ないよな。だれか、仕込んだかい。』
おばさまが言った。
『まさかあ。さっき掘ったばかりさ。まだあるみたいよ。あんたさん、自分で掘ってみなければ。』
『うんだ。』
ぼくは、現場に行き、そこらあたりを掘ってみた。
『ありまあ。あるな。魔法みたいだ。ちょと、山口センセ、呼んでください。』
😍💓ドキ
『こりゃ、オーパーツかな。』
『まさかあ。そんなもん、ありませんよ。ドリームです。』
『まあね。しかし、こりゃ、たぶん、プラスチックみたいだな。それにしては、冗談にしても、さすがに、縄文時代のプラスチックが分解しないで、きれいに残ってるとは思えないしな。』
『ですね。なら、これは、セラミック? なんだか、やはり、違うよな。』
『うん。セラミックじゃなかろう。だいたい、縄文時代にこんなのは、なかったろうし、見たことないし。』
『分析ですね。』
『なんだか、ここ、怪しいな。』
『はい。』
そこで、テレビが、さらに変なコトを言い始めたと、伝言が来た。
『こちらは、ジラ。ジラ。みなさん、こにちは。こちらは、ジラ。まもなく、ジラから、ごあいさつ、します。こちらは、ジラ。みなさん、こにちは。こちらは、ジラ。まもなく、ジラから、ごあいさつ、します。』
『きましたね。』
『うん。まるで、下手くそな、やましんのマンガだな。変な遺物は出る、へんなのが、首都に来る。変な放送が来る。やな、1日になりそうだなあ。』
実際に、それは、つまり、歴史をひっくり返したのである。
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