第40話 コンビニまで
ドアフォンを押そうとしたら、ドアの方が先に開いた。
驚いたわたしに、
「ベランダから見えた」
眞白さんがそう言った。
「そうなんですね。自転車ありがとうございました」
お礼を言って鍵を渡した。
「じゃあ、帰ります」
「なんで?」
「まだレポート終わってないから」
帰りかけたわたしを眞白さんが呼び止めた。
「待って。コンビニに行くから途中まで一緒に行くよ」
待っていると、眞白さんはちゃんとドアに鍵をかけた。
「何?」
「鍵、かけてるのを見てました」
「ちゃんとかけるよ。うるさく言う人がいるから」
眞白さんはなんだか機嫌が良さそうだった。
マンションの駐車場をぬけて、角を曲がる。
大通りに出てたところでコンビニに着いた。
「じゃあここで」
「ここじゃないんだ。行きたいのは、もうひとつ向こうのコンビニ」
「何買うんですか? お酒を飲みすぎないでくださいよ」
「もう飲まないよ。未来ちゃんがいてくれるんなら」
こんな冗談、どう返事したらいいのかわからなくて、何も言えなかった。
こういうのには慣れてない。
そのまま、大通りを駅に向かって歩いている途中、スニーカーの靴ひもがほどけかけているのに気が付いて、一瞬、紐を結びなおすのに立ち止まった。
それに気が付いた眞白さんが真顔で言った。
「頼むから急に立ち止まらないで」
「すぐに……」
追いつくのに、と言いかけて、やめた。
少しだけ志保理さんの歩くのが遅れた、その一瞬で、眞白さんは志保理さんが事故に合うのを目の前で見たんだった……
だからだ。眞白さんは道路とわたしの間に立っている。
2つ目のコンビニに着いた時、ちょうど中から出て来た男の人が、こちらをじっと見ていることに気がついた。
その男の人は近くまで来ると声をかけてきた。
「いいねぇ」
「いいだろ」
眞白さんが笑って言った。
「見せつけんなよ」
そう言って、眞白さんの肩をポンと叩くと、その人は行ってしまった。
「今の人って、知り合いなんですか?」
「消防署の人」
「え?」
眞白さんを見上げると、笑っていた。
「冷蔵庫買ったんだ。だから冷凍庫にアイスも買った。明日、食べにおいでよ。まだレポートある?」
「ないです。明日の朝提出したら終わります」
「良かった。じゃあね」
眞白さんはそう言うと、来た道を戻って行った。
コンビニに行くと言っていたのに、コンビ二には寄らないまま。
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