第37話 変化

明るい時に眞白さんのマンションに来るのは2回目だった。


ドアフォンを押したら、しばらくしてドアが開いた。

なんだかいつもと違う。


玄関を見ると、誰かの靴が見えた。


「お客さんですね。わたし帰ります。これどうぞ」


駅前で買ったチーズタルトを渡して、背を向けた時、


「あ……」


眞白さんが何かを言いかけた。

それで振り向いた。


「何ですか?」

「明日から、当分事務だけど署に出るから。7時くらいにならないと家にいない」


だったら……


「良かった。もう大丈夫ですね。じゃあ、失礼します」


それだけ言って、眞白さんの部屋を後にした。

階段を降りていると、眞白さんが追いかけて来た。


「未来ちゃん」

「はい?」

「えっと……あ、前に、署に差し入れしてくれたやつ、あれ食べたい」

「福寿のあんこパイですか?」

「それ。どうしても食べたい」

「じゃあ、持って来ましょうか?」

「明日は?」

「はい。じゃあ、明日持って来ます」

「待ってる」


眞白さんに食べたいと思えるものができたことが嬉しかった。

福寿のあんこパイって最強なんだな、そう思いながらマンションの駐車場を歩いた。

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