第32話 絶対

高2の時、膵臓癌で母を失って、一番最初の感情は……怒りだった。

理不尽な死を受け入れることができずに、ただ腹がたった。


母は、何でわたしを、家族をおいていってしまったのか。


どうして母は自分の体なのに気づかなかったのか?


どうして父は母の病気に気づかなかったのか?



全部それを父にぶつけた。

父は、わたしがどんなに父を責めても何も言わなかった。

代わりに


「いいんだよ、未来。未来が何を言っても、未来は父さんの娘だから。絶対にそれは変わらないから」


そう言ってくれた。



次は罪悪感だった。


どうして毎日一緒にいたのに気が付かなかったんだろう……

母の病気に気が付かなかった自分を責めた。

父にひどいことを言った自分を責めた。


「ごめんなさい。ごめんなさい」


そう言って泣くわたしに、やっぱり父は優しかった。



わたしは父の、わたしに向ける絶対に揺らがない思いに救われた。

父は、ぐちゃぐちゃで最低なわたしをずっと見守ってくれた。



それで、ようやく母の死を受け入れて、学校に行くことができた。




眞白さんは、わたしを利用すればいい。


志保理さんの死を受け入れることができるまで。

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