第28話 覚悟

唯一知っている携帯の番号に電話する。

2コールで相手は電話に出た。


「未来ちゃん?」

「坂下さん、今ちょっといいですか?」

「うん、大丈夫。ちょうど休憩してたから」


仕事の邪魔をしていないことに少しほっとした。


「今日、東奈大学病院の近くで崩落事故がありましたよね?」

「……ああ、うん」

「眞白さん、怪我しましたよね?」

「知ってるんだ」

「それで……朝、出動する前、眞白さんの様子ってどうでした?」

「出動の前? そう言えば、電話がかかってきてた。その後、ずっと黙ってるから、『なんかあった?』って聞いたら、『なんでもない』って言ってたけど」

「そうですか」

「眞白らしくない事故だったんだよね。いつもならあんな無茶しない。結果、眞白が助けた人は怪我もなく無事だったけど……」

「教えてくれて、ありがとうございます」


少し沈黙があった。


「……ねぇ、未来ちゃん、傷つく覚悟はあるの?」

「はい」


答えに迷わなかった。


「じゃあ、もう何も言わない」


電話の向こうで何か放送が聞こえた。


「もう切るね。行かなきゃ」

「はい。気をつけてください」



眞白さんは、出動の前に志保理さんの死を知ってしまったんだ。

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